one night
□第二夜
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部屋に着いてベッドへセツナを横たえると、カイはそのポケットからベイブレードを取り出そうとした。
・・・しかし、触れようとしたその途端、電流のようなものが手を弾き、カイは思わず顔をしかめた。
「伝説から消された聖獣、か・・・。しかし、それを何故こんなやつが?」
見れば見るほど不思議だ。
そういえば、先ほどシェルキラーの後輩である一人の少年が、こいつは突然現れたと言っていた。
そのときはさほど興味もなかったが、相手が聖獣遣いとあっては別だ。
一刻も早く、回復を願うところである。
「カイさん、タオルと水です。」
しばらくしてスズカがやって来たが、カイはセツナから目を離さなかった。
「カイさん、そいつ・・・どうするんですか?」
「さあな」
ひとまず、そう易々と逃がしてやるつもりはない。
だとすると、シェルキラーの一員にするのが賢いか・・・。
「こいつが回復してから考える。下がれ。」
「はい・・・」
スズカがいなくなると、カイはタオルを水で濡らし、セツナの額にのせた。
若干火照った身体は汗ばんでおり、苦しそうとまではいかないものの、気分はあまりよくないだろうが、カイにはここまでしかできない理由があった。
「・・・しかし、この格好でうまくごまかしたつもりか。」
まったくサイズの合っていない服を見て、溜め息を漏らしたが、そんな事情もこいつが起きればわかること。
適当な本を選んで、近くにあった椅子に腰掛け、ページを捲る。
『 』
ふわりと、窓から風が入り込む。
そのとき、互いのベイが共鳴するかのように光ったような気がした。
「ん・・・」
まただ、この感じ・・・。
服はびっしょり濡れていて、私は気付いたら横たわっている。
一体1日に何度気絶すれば気が済むのかと呆れつつ、上半身を起こせば、当たり前だけどそこには見慣れない景色が広がっていた。
「目が覚めたか。」
「貴方は・・・」
つかつかとこちらに近付くその人物は、先ほど私達を倒した男の子。
名前は・・・
「・・・俺はカイ。貴様の名は?」
「あ。えっと・・・セツナ。土崎セツナ・・・。」
「念のために聞いておくが、女か。」
「う・・・」
一瞬返答に困っていると、カイは私に向かって手を伸ばす。
「どうした。答えられないのなら無理にでも確かめるぞ。」
「お、女だよ!」
別に男として無理に通せとは言われていないし、正直に話したのだけれど、どうやらカイは気付いていたらしく、大したリアクションは見せなかった。
「・・・ところで、貴様はどこでそのベイを手に入れた。・・・いや、何故それを持っている?」
「どこって言われても・・・川に落ちてたから・・・」
嘘は言っていない。
「それで拾ったから、えと・・・」
そういえば、異世界から来たと言うことは話してもいいのだろうか?
答えられないでいると、カイが溜め息を漏らした。
「・・・麒麟の聖獣のことは知っているな。」
「・・・うん。」
「先ほど貴様が俺に聞いたが、確かに俺はそいつや他の聖獣についての情報は持っている。」
「!!それじゃ・・・」
「教えてやってもいいが、条件がある。」
「条件?」
少しだけ、身体が強張るのがわかったけれど、私はカイの言葉を待つことにした。
「俺の仲間になれ、セツナ。」
「あ、なんだそんなことか。寧ろよろしくお願いします!」
「・・・・・・。」
あれ?
自分から誘ったくせに、カイは驚いたように目を見開いた。