one night

□第十八夜
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結局また眠れなかった・・・。

目の下の隈は更にひどくなっている。

あれから私はかなり長い時間を一人ですごし、皆が寝静まってから部屋へ戻った。

誰も探しに来なかったのは、多分キリが気を使って上手く言ってくれたんだろうな・・・。



そして今朝、フランスに渡るために駅に来たけれど、案の定寝不足でキョウジュの話も碌に耳に入ってこない。

それでも回りから心配されることがないのは、私の振る舞いがいつもとさほど変わらないか、はたまたこちらもキリの口添えのお陰かわからないけど・・・。



「ふぁ・・・。」



欠伸を噛み殺し、皆の後からついていく。

ガラガラの電車に乗り、誰の隣にもならないように席につく。



前の方では小学生組がよくわからないビデオを見ている。

私は景色とそちらを交互に見ながらぼんやりとすることしかできなかった。



しかし、その映画も終わり、電車がトンネルに入ればいよいよやることがない。

いまなら眠れるかな?

「・・・・・・。」

・・・・・・無理だった。

「セツナ、暇なら一緒に来てくれないか。」

「・・・レイ。」

そのとき、ちょうどいいタイミングでレイに声を掛けられ、電車の中を散策することになった。












後ろの席の方へ歩き、隣の車両へ移動する。

「・・・あれ。誰もいないね。」

「あぁ・・・。」

ゆっくりとその車両を歩く。

「妙だと思わないか。」

「うん・・・平日の真っ昼間とはいえ、こんなにフランスへいく人って少ないものなの?」

「・・・どうかな。」

更に隣の車両へ進むも、やはり誰もいなかった。

それどころか、本来車内というのは静かで当たり前なのに、どこか不気味に感じる。

「ねぇ、レイ。私達間違えて回送列車に乗ってるとかそういうオチはないよね?」

「仮にそうだとしたら、この電車は もう2時間も車庫に戻らずに走っているということになるぞ。」

流石にそれはおかしい・・・。



結局、一番後ろの車両まで、私達は人に会うことがなかった。



その後、一旦元の車両へ戻り、今度は前へと歩を進める。

タカオとマックスはキョウジュに何か悪戯をしてるし、カイはいつも通り目を瞑ってじっとしている。

しかし私はあまりそちらを見ないようにして、レイの後を追った。



「・・・やはりこっちも誰もいないか。」

「みたいだね・・・。」

先頭車両に着き、私は近くの席に腰を下ろした。

レイは側にあったコインを拾い、コイントスをする。

「裏・・・か。・・・セツナ、体調は大丈夫か。」

「え・・・あ、うん。大丈夫だよ。そだ。誰もいないならキリを実体化させようか。何かわかるかも・・・」

ポケットからドラキリューを取りだし、キリへと実体化させる。

すると、現れた瞬間にキリはブルッと身震いした。

『なんだ・・・?気分が悪いぞ。』

「風邪?」

『聖獣が風邪を引くわけがないだろう。・・・妙な気配を感じる。』

「聖獣か?」

『ああ・・・恐らく、昨日のやつに限りなく近い。しかし、やつだけならばこんな嫌な感じはしなかったぞ。』

私とレイは顔を見合わせた。

「まさか仲間を連れて俺達を嵌めようとしているのか!?」

『可能性は高い。すぐに皆同じ場所へ集まれ!』

私達は駆け足で戻る。



しかし元の車両に足を踏み入れてすぐに電車が急ブレーキを掛けた。

「わっ!?」

『セツナ!!!』

キリが受け止めてくれたものの、勢い余って肘を思いっきり座席にぶつけてしまう。

「痛っ・・・てか痺れる・・・。」

ジーンとくる肘を支え、立ち上がると同時、レイとカイがそれぞれ前と後ろへ走り出した。

「どうしたセツナ?」

「ちょっとぶつけただけ・・・皆、よく聞いて。この電車は私達以外の人間は乗ってないの。」

「Why!?それじゃあ運転手さんや車掌さんは!?」

「わからない・・・多分いま、レイとカイは確かめに行ったんだと思うけど・・・キリがね、昨日の聖獣と同じ気配を感じたみたいなんだ。もしかしたら私達を嵌めようとしているのかもしれない。」

「なんだって!?」

「まずは落ち着いて。・・・二人が戻ってきたら、どうするか考えよう。」



それからすぐに二人は帰ってきた。

やはり運転手はおろか、車掌すら乗っていなかった為に、私達は全員外へ出ることにした。

僅かな光だけを頼りに、線路を辿っていく。

ここがどこかもわからず、手がかりなんてない。



そんな中、キリが一点だけを見つめる。
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