one night

□第十四夜
1ページ/6ページ

その足で大会の会場へ着いた私達は、各々前夜祭を楽しんでいた。

「カイ、あっちのお店見てみようよ!」

「断る。一人で行け。」

まだ眠いのか、カイは欠伸をしながら答えた。

「えー、迷子になるじゃーん。」

「なら諦めろ。」

「ちぇっ。」

「まぁまぁ。それならセツナ、俺が一緒に行こうか?」

「レイが来てくれるの?やった!!」

私はレイの腕をとってブンブン降ると、上機嫌で綿飴の列に向かった。



「それにしてもすごいね。日本や中国の時とは規模が違う・・・。」

何もかもが大きいとわかってはいたが、それでもこんなに大々的にお祭り状態になるとは思わなかった。

「PPBの本拠地があるからだろうな。」

「なのかな?野球やサッカーの試合みたいだね。・・・それにしても、皆大きいな。」

時々選手らしき人達を見かけるけれど、パット見じゃ年齢がわからない。

「うーん・・・これ迷子になったらなかなか見つけてもらえなそう・・・。」

「大丈夫だろう。目印になるブースはあるし、いざとなったらそこに行くからな。」

「それでも不安だよ。こんなとこじゃ携帯も使えないし。」

「セツナ、お前子供なのに携帯持ってるのか!?」

私の言葉にレイがこれでもかというくらい目を丸くしている。

「え、普通じゃない?」

「日本でもそんな子供見かけなかったぞ。」

「え・・・。」

そういえば、カイも御曹司のくせして携帯の類いを持っていなかった。

キョウジュは普段からPCを持ち歩いているけど・・・。

「ネット、使えないのか・・・・・・。」

そこで私は自分の記憶に違和感を感じる。

いや、少なくとも私の通っていた学校の周りの友達は大抵携帯を持っていた。

学校?

私の・・・学校・・・・・・あれ、もう日本では夏休みが終わる頃なのに、私こんなとこで何やってんだっけ・・・・・・?

「セツナ?」

「私・・・どこにいたんだっけ・・・?」

フラッと脚がよろける。

「セツナ!!」

「っ!!」

レイに抱き止められ、名前を呼ばれてハッとする。

「私・・・何考えてたんだっけ?」

「大丈夫かセツナ。・・・少し向こうのベンチで休んでろ。綿飴なら俺が買ってくるから。」

「でも・・・」

「いいから。」

レイに力強く言われ、大人しく少し離れた場所にあるベンチに腰かけた。



暫くボーッと屋台を眺めるうちに、段々思い出してきたことがある。



「そうだよ私・・・異世界から来たんだ。」

背筋がゾクリと凍る。

何故忘れそうになっていたんだろう、こんなこと・・・。

これは、明らかにおかしい。

しかし、いまここでキリを実体化させて問い詰めるわけにもいかなくて、私はジッと地面を見つめながら、レイが来るのを待っていた。












巨大な綿飴を二人で食べながら、ステージの近くに着くと、丁度今回のメインイベントである、大統領とのバトルについての説明をブレーダーDJがしていた。

ホント、あのお兄さんどこまで来るつもりなんだか・・・。

「てか大統領とのバトルってすごいな。」

どんだけベイブレードすごいんだよ、と心の中で突っ込みながら、大統領と共に闘う有名人たちを見ていた。

すると、金髪のグラマーなお姉さんが出てきた辺りからレイがもじもじし始める。

「レイ・・・まさかあのおっぱ・・・お姉さんが好みなの?」

「なっ・・・わ、悪いか!?」

「いや、悪くないけど意外すぎて・・・。」

だってマオをフッたくらいなんだから、てっきり女の子に興味がないんじゃないかと思っていたんだもん。

「ただのファンだ。」

「へー・・・ちなみにどの辺がタイプ?顔?スタイル?」

「う、うるさいぞ!・・・あ、そうだ。そういえば大統領と闘うブレーダーをうちから選ぶという話があったな・・・。」

そう言いながらレイは踵を返し、キョウジュを探し始めた。

「あのお姉さん狙いだ〜。・・・もフ!?」

レイは綿飴を手でざっくり千切ると、私の口に突っ込んだ。

すぐにベタベタになるそれは、口に入ればすぐ溶けるものの、流石にこの量を一気に処理するのはキツい。



大人しく、顔に着いた飴を取っては食べ、取っては食べと繰り返しながら、レイの後を追ったのだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ