one night

□第十三夜
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「カイっ!!」

勢いよく扉を開ける。

「なんだ騒々しい。」

「なんだって・・・急にどっか行っちゃうから心配してたの!!」

「近所のスタジアムで練習していただけだ。」

「それなら何かメモでも置いてってよ・・・。」

「なんの必要がある。」

「あるよ!!・・・急にいなくなったら寂しいし、どこにいったのかもわからないでカイに何かあったら困るもん・・・。んぐっ!?」

ぎゅむっと顎を捕まれ、お互いに視線が交わる。

「お前がそれを言うか。」

「あぅ・・・。」

そうでしたね・・・。



カイは私を解放すると、ベッドに直行した。



「もう日付も変わった。早く寝なければ翌日に響くぞ。」

「わかってるよ・・・」

ドライヤーで、長らく濡れていた髪を乾かし、ベッドサイドのランプ以外の灯りを消す。

それにしても少し涼しいな・・・。

冷房が効いているのかもしれないと思ったけれど、生憎空調の電源はオフになっていた。

てもちょっとこのまま寝るのは考えてしまう。

「・・・・・・。」












「・・・自分のベッドがあるだろうが!」

「だって寒いんだもん!」

グイグイとカイを押して、一人分のスペースを確保する。

「セツナ・・・いい加減にしろ!」

「だってカイ温かいんだもん。」

「そういう問題ではない・・・って、だから向こうで寝ろ!」

そう文句を言いながらも、本気で追い出そうとしていないし、また、自分が向こうに行こうともしない。

ズルいけど、そのことをよく知っているからつい甘えてしまうのだ。

「・・・・・・勝手にしろ。」

「ありがとう・・・。」



あー・・・ヤバイな。

多分これ、もうそろそろ一人で寝れなくなってる。



お兄ちゃん・・・早く願いを叶えないと、どんどんダメ人間になりそうです。

元の世界に早く戻らないと・・・・・・・・・・・・。



・・・・・・・・・・・・元の世界・・・・・・・・・・・・?



・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



・・・・・・わ、あぶな。

何大事なこと忘れてんだろ。














『セツナ・・・。やはりそろそろか・・・・・・。』













次の日。

大転寺会長の指示の元、すごい特訓ができるとのことで、私達は知らない場所へ連れてこられた。

草や木の茂るそこは、良いように言えば、自然豊かなところ。

しかし、悪いように言えば、生活に少々不便な環境だった。



戸惑う私達を他所に、案内の人は帰ってしまうし・・・。



「最先端の施設・・・って聞いてた筈なんだけど・・・。」

「諦めるしかなさそうだな。」

「そんなぁ・・・。」

タカオが肩を落とすと、お祖父さんが小さな小屋を発見し、雨風は凌げると言う。

しかし食料はどうするんだと心配したその時のこと。



「それはダイジョーブ!食料は用意してあります!」

「誰だ・・・?」

「ボクはアントニオ。」

・・・猪木?

「ここで皆さんとトレーニングをするように会長に言われてマース。」

「一緒にトレーニング?」

「会長にですか?」

「アハハ、よろしく。・・・やっぱり場所は間違いないよネ。」

マックスが微笑みながら近付くも、やっぱりこの環境での特訓と言われてもやっぱりピンとこないらしい。

・・・無限サバイバルでもしろっていうのかな?

というか、この子どこの国の子だろう?

疑問に思ったのは私だけではなかったらしく、皆がひそひそと話をする中、タカオがどこの選手かを聞いてみた。

「はい、ドミニカ共和国代表デス。」

一人だけの特別枠の参加というけれど、実際にタカオと勝負をした結果・・・。



「オンっ!?・・・しまった。」

「アントニオ、場外。」

「って、ダメじゃんっ!!」

思わずツッコミを入れてしまう。

対戦相手のタカオも苦笑いを浮かべている。

「アントニオ、本当に選手なのか・・・?」

「勿論デス!!ただし、ワタシの国にはベイブレーダーは一人しかいません!!」

「!?」

ピクッと、ポケットの中でベイブレードが動く気配がした。

そういえば・・・以前キリは私を選ぶときに・・・・・・ん?

「あれ・・・?」

「どうしたんじゃ、セツナちゃん。」

ボンヤリと額を押さえる私を心配してか、お祖父さんが顔を覗き込む。

「いえ・・・なんでもありません。」

なんだろ・・・何か忘れてる気がする。

でもそれが思い出せない・・・。

後でキリに聞かなきゃ・・・。



「タカオ!ダメです。」

・・・・・・あっ。

キョウジュの声で現実に引き戻される。

「我々はアメリカチームに勝つためにここにきてるんです。いまのままのBBAチームではアメリカチームには勝てません。それはレイの戦いでもハッキリと・・・・・・あ・・・・・・。」

失言だと気付き、キョウジュは黙る。

レイは難しい顔をしてしまうし、タカオもぎこちなく笑う。

あの敗けが、チームの雰囲気をも悪くしてしまうのだ。

「そんなこといってもさ、無視するわけにもいかないじゃん。大体、こんなところじゃ大したこともできないだろ?それに、アメリカ大会はもうすぐだぜ?今さらじたばたするより、楽しくやろうぜ。」

「しかし・・・・・・。」

キョウジュの考えはわかる。

こんなところでのんびりしている暇なんてないんだと。

でも、あの大転寺会長がなんの考えも無しにこんなところに放り込むとも思えない。

・・・・・・それでも、どうしたらいいのかがわからないのだけど・・・・・・。
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