one night
□第七夜
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「カイ・・・。」
「今回は倒れなかったか。」
「なんとかね。」
「・・・・・・。」
カイは黙って近付いてくると、私の脇腹に手を通し、そのまま自分の肩に掛ける。
「カイ・・・?」
「なんだ。」
「いや。どうしたんだろって・・・。」
「自力で戻れるのなら置いていく。」
その言葉の意味を理解した私は、カイの手をギュッと握った。
・・・遠回しだけど、なんだかんだで心配してくれるんだ・・・。
「ありがと。・・・よろしく。」
「ふん。」
そのまま私達はゆっくり歩き出す。
「ねぇ、カイ。・・・マックスのベイブレード、すごく強いよ。」
「奴のベイが強いんじゃない。奴が強いんだ。」
「・・・なるほど。」
今ならその意味がちゃんとわかる。
「あ、そうだいい忘れてたけど。」
「なんだ。」
「レイ聖獣持ってるよ。白い虎の。」
「何・・・!?」
驚いたカイが私の手を放して振り替える。
「あだっ!?」
突然支えを失った私は転び、膝を打つ。
「何故それを早く言わなかった!?」
「突然離さないでよ・・・てて・・・。いや、なんかタイミング失っちゃって・・・。」
「青龍に白虎・・・残るは玄武だけか・・・。」
「・・・・・・ねぇカイ。私聖獣持っているならタカオやレイとも仲間になりたいんだけどさ。シェルキラーに誘うのダメ?」
「断る。」
「なんでよ!?」
「解散させようと思っているからだ。」
「なーんだ。・・・ってええー!?」
私の声は廊下中に響いた。
「喧しい。・・・もう必要がなくなったからだ。」
「必要がないってどういうことよ!?」
カイは私を見下ろしたあと、同じ目線になるように膝をつく。
「・・・麒麟に選ばれた貴様がいる。それだけで青龍と白虎に巡り会うことができた。恐らく、このまま行けば玄武が見つかる日も遠くはない。」
「私が・・・?」
そんな、ただの偶然じゃないの?
「そうだ。・・・だから、俺はこれからも貴様と戦うことを選ぶ。」
ドクン・・・と心臓がなる。
「カイ・・・貴方そんなに・・・」
「勘違いするな。貴様の能力を買っているだけだ。」
「いや、何をよ?」
「・・・・・・わかっていないのならば構わん。」
「カイってよくわかんないよねー。」
「・・・・・・。では、先ほどなんと言おうとした?」
「自分で遮ったくせに。カイってそんなに私のこと信頼してたんだって思ってさ。」
「それなりに、な。そのアホがなくなればもっと信頼に足るがな。」
「う、アホって・・・。」
そんな風に嫌味っぽいことを言うわりには、顔は穏やかだと気付く。
「・・・そんな風に眉間に皺を寄せなければモテそうなのに。」
「何かいったか。」
「いえなんでもー。」
「アホなこと言っていると置いてくぞ。」
「ヤダッ」
思わずその手を掴むと、カイは力一杯私を引き上げ、そのまま立たせてくれた。
「行くぞ。とっくに木ノ宮達の戦いは始まっている。」
「うんっ!」
そして再び、私達はゆっくりと歩き出すのだった。