next night
□第二十六夜
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次の日。
いよいよAブロック、タカオとマックスが、ケインとジムとのバトルをする日がやってきた。
夕べは誰よりも早く寝たタカオだったけれど、起きるのもとても早かった。
勿論、私もあまり眠れる筈もなく、二人して日の出と共に中庭でプラプラ過ごしていると、次に起きてきたカイとレイがやってきた。
「凄かったらしいな、バーニングケロベロスの力は。」
「レイ・・・。ううん、すごいのはバーニングケロベロスだけじゃなかった。ゼオも、信じられないくらい強くなってた。」
「・・・・・・。」
「そうか・・・。」
Dブロックで、初戦を交える私としては、どうやって勝とうか未だに悩んでいる。
ゼオのペアのゴルドの力も未知数な上、ヒロミは聖獣を持たない。
それに何より・・・。
私は力なくカイを見た。
結局あの日、カイからは皆にゼオとヒロミの前で、麒麟を実体化させられないことを話さない方がいいと止められている為に、二人で考えてはいるものの、未だに突破口が見つからないでいる。
なんとかしなきゃ、という気持ちばかりが募り、かなり窮屈だった。
「でも、確かにあのベイからはとてつもない力を感じたんだ。」
「タカオ・・・。」
「木ノ宮。セツナ。・・・それで、お前達は何を考えている。」
「・・・・・・。」
「余計なことを考えず、目の前のことに集中しろ。さもなくば、ゼオどころかケインやジム、ゴルドすら倒せなくなるぞ。」
「「・・・・・・。」」
確かにカイの言うとおりだ。
「・・・そうだよな。」
「うん・・・・・・。」
大きく息を吸い、そして吐く。
今日も暑くなるんだろうな・・・。
「・・・・・・。」
パシンッ!!
迷いを消すように、頬を強く打った。
しかし、会場の控え室にやって来て、準備をしていた私達の元へ、とんでもないニュースが舞い降りた。
それは、ケインとジムが一回戦を棄権するという、信じられないようなニュースだった。
「そんな、なんで・・・!?」
「詳しいことはわかりません。しかし・・・。」
丁度そのとき、控え室のドアが開いた。
「ケイン!!」
「ジム!?」
なんと、棄権したその足で、二人は楽屋にやって来たのだ。
「一体何があったんだよ!?ケイン!」
「・・・・・・。」
ケインは無言でベイブレードを差し出してきた。
「これって・・・」
「キングとクイーンにやられた・・・。」
「!!」
「うっ、うぅ・・・・・・。」
ボロボロになったベイブレードを手に、ケインもジムもふるふると肩を震わせている。
「酷い・・・なんでこんなことができるの・・・。」
ヒロミも口に手を当て、信じられないというような顔をしている。
「朝、練習をしていたら突然襲われたんだ・・・・・・畜生!こんなベイでどうやってバトルしろってんだ!?」
「ケイン・・・。」
「・・・俺は、この大会でお前と戦いたかった・・・・・・。」
「っ・・・・・・。」
楽屋には、ジムの嗚咽だけが響いている。
その奥で、カイが目を鋭くして、どこかを睨んでいた。
色んな戦いが混じり合うこの大会・・・。
このままじゃ、五聖獣が危ないだけじゃ済まない。
BBAも、ワールドチャンピオンシップも、ベイブレードも、こんな風に人を傷付ける為に作られたわけじゃない・・・・・・。
心の何処かで、熱い炎が灯ったように、静かな怒りが湧いてくる。
それに反応するように、ドラキリューがピクリと動いた。
結局その日は急遽、Bブロックのバトルからのスタートになった。
マリアム・ユスフの登場時と、キング・クイーンの登場時の観客の熱にかなりの差があったけれど、彼等は特に気にも留めずにスタジアムに立った。