next night
□第二十二夜
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それから数日が経った。
「レイ、セツナ。これを付けてみてもらえますか?」
「ん?」
「なに、これ?」
足場の悪い海の近くの岩場で、皆とトレーニングをしているときのことだった。
私とレイの番になったときに、キョウジュが二つのウエイトディスクを差し出してきたのだ。
「セツナのドラキリューにはもう触れないので・・・記憶している限りで型に合うようには作ってみたのですが、どうでしょう?」
「いいの!?ありがとうキョウジュ!!」
「いえいえ。」
キョウジュの温かい手からしっかりと受けとり、キリに許可を取ってドラキリューのパーツを変えようと、一度分解をしてみる。
すると、ここに来て私は意外な"発見"をすることになった。
「この石・・・こんなところにあったのか!?」
「なんだ?どうかしたのかセツナ。」
「うん・・・。前に大転寺会長にもらった石なんだけど、無いと思ったら何故かベイブレードの中に入り込んでた・・・ってか、取り込まれてたみたいでさ。」
「前に探したやつか。」
その石は、ビットチップの裏やブレードベースの中に僅かに顔を覗かせていた。
しかし、あの石板を精製して作られたものだということを差し引いても、なんでこんなところに?
「そういえば・・・あの石を無くしてからじゃないか?」
「え、何が?」
「アタックリングやMGコアが変わったと言っていただろう。」
「あ・・・。」
カイに言われて思い出す。
あのときももしかしたら、なんて思っていたけど・・・やっぱりあの石、ドラキリューに取り込まれていたんだ・・・。
「ドラキリューが私以外に触れなくなったのもあのときからだったしね・・・。」
「もしかしたら、あの石がドラキリューとセツナちゃんを選んだのかもね。」
「マックス?」
「だってあの石、石板から作られたものなんでしょ?この間、聖獣達が僕らを選んだように、その石もセツナちゃんを選んだんじゃないかな。」
「・・・・・・。」
大転寺会長は、あのとき"勘"だと言っていたけど・・・そう言われると少し嬉しい。
「そうだね・・・。よし、それじゃあ早速気合いを入れて練習するぞ!!レイ、行くよ?」
「ああ。」
「「3、2、1、ゴーシュート!!」」
「すっげぇ・・・動きが格段に素早くなったぞ。」
「それだけじゃないよ。あんなに激しくぶつかり合っているのに、ちっとも回転力が下がってない!!〜っ、キョウジュ!!僕にも早く作ってよ!!」
「バルカンクロー!!」
「ベンチャーアップ!!」
強くならなきゃ。
オズマ達の分まで聖獣を大切にしなきゃ。
沢山の大事なことが、私達に降りかかってくる。
でも、大丈夫だよ。
私には、仲間がいる。
そして、
「いっけぇ、ドラキ・・・」
「おーい!!」
!!
折角軌道に乗っていたというのに、その声を耳にした途端、ふにゃんと、身体から力が抜けていくのがわかった。
来たのだ。
「ゼオ!!」
またか・・・。
私は心の中で溜め息を吐き、ドラキリューをその手に戻した。
レイも心配そうな顔でドライガーを戻したけど、なんでもないよと口角を上げて見せれば、一先ず納得してくれたようで、皆の輪へと進んでいった。
「見てくれよ!!これ、今朝うちに届いたんだ!!」
そう言って見せた封筒から出てきたのは、ワールドチャンピオンシップ・・・世界大会の通知だっだ。
やっと、こっちの世界であの出会いから一年が過ぎたんだ・・・。
「ゼオもそれに出られるんだ?」
「うんっ!!僕はもともとジムの方でエントリーしてたんだけど・・・でも、勝つことじゃなくて、タカオ達と同じ舞台で戦えることが、何より嬉しいよ。」
そう言って笑うゼオの顔は、相変わらず眩しかった。