next night
□第十九夜
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「・・・・・・何故貴様が怒る。奪った麒麟の力は、他の器・・・つまり、貴様が持つことができるようになったというのに。」
「怒るよ!!貴方達の先祖が余計なことをしたせいで・・・キリは、ずっとひとりぼっちだったんだからな!!?」
何十年、何百年、何千年・・・・・・もっと、もっと長い間、キリは記憶の一部すら取られ、さ迷い続けていたんだ・・・・・・私に会うまで、ずっと。
自分の力だって満足に使えない・・・そんな理不尽な罪を負って。
「・・・・・・キリは・・・・・・キリは、あの力を悪いことになんて使わないし、利用なんて絶対にさせない!!」
「どうだかな。罪を負わされて、今はそうせざるを得なくなっているだけかもしれない。」
「違う!!」
「ならば、お前はどうだ。特に何の罪も背負っていないお前が、麒麟の力をちらつかせられて、望むことは・・・私利私欲の為ではないと言い切れるのか?」
「!!」
図星を突かれた。
そうだ・・・・・・三つのお願いの内、一つはこの世界の記憶を消さないようにすることを頼んだ・・・。
残りの二つの内、一つはお兄ちゃんに会うために絶対に使うことを決めている・・・・・・。
「・・・・・・ふん。やはりな。そういう人間が強大な力を手にしているからこそ、俺達はお前のことも狙っていた。」
「っ・・・・・・。」
「しかし、安いものだろう。本来は麒麟自身に眠る筈の聖獣の力を、入れ物代わりに預り、提供するだけでいい。・・・・・・狙われるリスクはあるにしても、時空すら渡ることの出来る力を手にできるのだから。」
「・・・私・・・私は・・・・・・。」
「どうした。何も後ろめることはないだろう。・・・本当はここに来たのも、白虎を取り戻す為の手掛かりを求めていたのではなく、自分のエゴの為に来たんじゃないのか?」
「・・・・・・。」
私は、結局・・・自分の為だけに戦っているのか・・・?
キリを利用して、お兄ちゃんに会うために、皆と離れ離れにならない為に・・・・・・。
"もう、違うだろう"
「!!」
頭のどこかで、澄んだ声が聞こえた。
「キリ・・・・・・?」
「どうした。空耳でも聞こえたか。」
「・・・・・・。」
目を閉じて、意識を集中させる。
間違いなんかじゃない・・・・・・確実に、キリの声が聞こえた!!
「(どこ、キリ!?返事をして!!)」
"・・・バカか。ずっと側にいただろう。"
「・・・・・・。」
思わず目を開け、回転するドラキリューを見た。
「・・・・・・そうだったね。貴方は、ずっと私のそばにいた。」
するとそのとき、ドラキリューから強い光が発生する。
「!!?」
「な、なんだ・・・!!?」
この光・・・・・・やっぱり間違いなんかじゃなかった!
「っ、キリ!!私は貴方を信じてる・・・!!一緒に戦う仲間として、大切な友達として・・・・・・、だから、だからっ・・・力を貸して!!!!」
無我夢中で叫び、ドラキリューへと手を伸ばした。
他の誰でもない、大切な仲間の為に。
そして、ありったけの思いを、貴方に・・・・・・。
『やっと、会えたな。』
「なっ・・・何だと!!?」
目の前に現れたキリは、ぬいぐるみなんかじゃなく、私と殆ど同じくらいの大きさになっていた。
「麒麟の力を戻した・・・!?いや、まさか・・・そう簡単にあの呪いが解ける筈がない!!」
『ごちゃごちゃ煩い奴だ。・・・さぁ、僕を封印するんじゃなかったのか?どこからでもかかってこい!!』
「くっ・・・!!」
「!!」
来る!!
そう思って身構えると同時、フラッシュレオパルドがシュートされ、辺りが一瞬だけ炎に包まれる。
『セツナ!!』
キリが咄嗟に庇い、だけれどすぐに熱いのが消えて、視界が開けると、そこにオズマの姿は無かった。
「逃げた・・・?」
『そのようだな・・・・・・さて、セツナ。』
「キリ・・・・・・。」
私達はお互いに向き合い、そして・・・・・・。