next night
□第十三夜
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タカオ達が帰ってくると、レイは私達を道場へ集め、チームサイキックとの試合を放棄しようと言い出した。
「何言ってんだよレイ!!」
「いえ、でも有効な手段かもしれません。万全な対策が出来ていない今、試合を延期するのも・・・」
「延期ではない、放棄だ!!」
「!!」
「一体何があったの、レイ・・・。」
「そうだよ、昨日はレイだって戦う気満々だったじゃん。」
「放棄してどうなる!!」
「タカオ・・・。」
「放棄してそれで、サイキックのやつらが諦めると思うか!?」
「あいつらのことだから、きっとまた、卑怯な手を使って襲いかかって来るわよ。」
「だからって、ルール違反してまで勝てばいいのか!?そんなバトルが、世界を制したBBAチームのバトルなのか!?」
「っ・・・・・・。」
シン・・・・・・と静まり返る道場。
「・・・・・・わかってるさ、レイ・・・・・・・・・。でも、今はやるしかないんだ!!やつらの挑戦を受けちまった以上、戦うしかねぇんだよ!!」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
レイは何も言わずに立ち上がると、道場を出て行こうとする。
「あっ、レイ・・・!」
呼び止めようとしても、するりと躱され、そのまま外へ行ってしまった。
「タカオ・・・。」
「・・・・・・。」
タカオも何も言わずに、ドラグーンを取り出すと、練習へ戻ってしまった。
仕方なく、残された私達も外へ行くものの、やはり思うように集中出来ない場面が多々あった。
夜になっても、やっぱりレイは帰ってこなかった。
「・・・・・・もう少し、話し合った方がよかったかもね。」
夕飯の時、マックスがそう溢すと、私とタカオはピタリと箸を止めた。
「・・・無駄だろ、そんなの。」
「・・・本当にそうかな?」
「なんだよ、セツナまで。」
「だって、そうでしょ?このままチームサイキックと戦うにしても、放棄するにしても・・・このままじゃBBAチーム自体がバラバラじゃん!私はそのためにここに戻ってきた訳じゃないもん!!」
そうだよ、こんなの違う。
「タカオの意見だって、レイの気持ちだって分かる。だけど、本来私達がすべきことや、あるべき姿を見失うなよ!!私達はBBAチームとしてチームサイキックの野望を止めるんだろ!?何さ、聖獣がちゃんといる癖に逃げてんじゃないよ!!」
私はそれだけ言うと、食べ終えた食器を片付けて廊下へ出た。
暗くなった道を歩く。
「・・・・・・カイはどうなんだよ。」
立ち止まり、後ろを振り返らずに聞く。
すると、こっそり後ろをつけてきたカイは私の近くに来た。
「お前と同じだ。」
「・・・・・・。」
その言葉だけで、少しだけ気持ちが軽くなる。
「・・・・・・行くぞ。」
「うん・・・。」
私達は夜の町を散々歩き回り、レイの行方を追った。
漸く見つかったのは、それから一時間程してからのこと。
河原の近くにある小さな橋に、彼の姿はあった。
「・・・誰かを待っているのか。」
カイが声を掛けると、ハッとしたように顔を上げるレイ。
「カイ。セツナも・・・。」
私達はレイから、偶然会ったチームサイキックのサリマという女の子の願いを聞いた。
昨日、私がケインから聞いた話と同じ。
デジタル聖獣の力に見せられ、勝つことにのみ執着してしまった姿を見てしまい、四人の気持ちがバラバラになっているのだという。
「・・・彼女の気持ち、なんとなくわかる気がして。きっと、俺がタカオに感じたのと同じように、彼女も大切な仲間がデジタル聖獣に取り込まれてしまうようで、嫌だったんだろう。・・・だから、・・・俺も・・・」
「その努力は無駄に終わるぜ。」
「えっ・・・。」
「何の心構えも無く、いきなり聖獣を手にしたブレーダーがどうなるか、お前だって見ただろう。」
ユウヤ君のことだ・・・。
この間のカイの目に、僅かに浮かんだ涙を思い出した。
「・・・後戻りは出来ない。奴等の元へいる限りはな。」
「じゃあ、彼女もいずれ聖獣の虜に・・・!!」
「ああ、だから俺達は戦うしか無いんだ。」
「でも・・・っ、タカオみたいにベイに細工なんてしたら・・・。」
「どんなことでもすればいい。」