長いお話

□ハローベイビー
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ジリリリリ
宿舎に鳴り響くけたたましいアラーム音。いつもなら、ひょんがアラームを止めてくれるので、数秒しかならないのだか、今日は一向に止まる気配がない。

……。……!うるさい!!

手探りでベッド傍にある目覚まし時計をつかみ、アラームを止める。勢いあまって、そのまま床に投げつけてしまったのはひょんには内緒だ。
だって、うるさかったんだもん…。ぼーっとする頭で、これ買い直しかもなぁなんて考えていると、いつもと何か違う事に気づいた。
…てか、ひょんどこ?

我らがSHINeeのメインボーカルであり、俺の恋人であるジョンヒョ二ひょんとは、同じベットでいつも寝るので、寝起きの悪い俺はひょんに起こしてもらうのが日課になっている。
…のだが、今日はそのひょんの姿が見えない。なんだよ、先に起きたなら、俺も起こしてくれたっていいじゃん。俺なんか機嫌損ねる事したっけ?そう思いながら起き上がるために、掛け布団をめくる。

「…うおおおぉっ⁉」

そこに横たわる物体を見て、思わず奇声をあげてしまった俺。

…イヤイヤイヤ。すいません、状況がのみ込めません。何だこれ?

「ミノ、朝っぱらからうっさい‼なにしてんの!」

俺の悲鳴を聞きつけて、キボマが勢いよく俺の部屋に乗り込んできた。その後ろからはなんだなんだと他のメンバーが覗き込む。

「ベット覗いてみろよ。」

俺の言葉を聞いてワラワラとベットに駆け寄るメンバー達。

「…ミノ。お前いつの間に子どもなんてこさえて来たんだよ。リーダーに相談も無しに!」

「俺の子じゃねぇよ!!」

そう、ベットには小さい身体をまるめて気持ち良さそうに眠る男の子がいた。…てか、この騒ぎの中よく寝ていられるな。

「うわ、サイテー。認知しない男なんて見苦しいぞ。正直にはけ!」
ここぞとばかりにキボマも乗っかり始めた。…めんどくさい。

「かわい〜!ミノひょん名前は〜?決めてないなら僕決めていい〜?」
ほっぺをツンツンしながら聞いてくるテミニ。いやいや、動物じゃないんだから…。ちょっとテミニは黙ってなさい。

「だから身に覚えないって…。てか、よく見ると俺よりジョンヒョニひょんに似てない?」

その言葉に一斉に男の子を覗き込むメンバー。

「そう言われればジョンヒョニひょんにそっくり!ひょんの親戚の子か何かかなぁ?…てか、ひょんはどうしたの?」
キボマが俺を見て問いかける。

「さぁ、てっきり先に起きてるもんだと…。リビングに来てないの?」
「うん、早く目が覚めちゃったから、ずっとリビングにいたけど見てないよ。」
オニュひょんがのんびりした口調でそう言う。
「案外この子がジョンヒョニひょんだったりしてね〜!」
「イヤイヤ、それはないっしょ?」
テミニの奇想天外な発言にあははと皆で笑いあう…。いや、まさか…ねぇ?

「んんんぅ。」

そうこうしているうちに問題の子どもが目を覚ました。
「…おはよう。」
取り敢えず、優しく声をかけて見る。
「…おはようごじゃます…。」

小さくペコと頭を下げる男の子。あたりをキョロキョロ見まわしたと思うと大きな瞳にみるみる涙を溜め始めた。
「ふえっ…おかあしゃんは?えぇっんっ、おがあじゃんどごーっ」マジかよ…。
「ウソ!ああ〜よしよし泣かないで!ほら、皆ぼさっとしてないであやすの手伝って‼」
キボマの一声で皆一斉にあやし始める。…五分後、なんとか泣き止んだ男の子。…なんか、朝から大分疲れた…。

「んで、君名前は?いくつ?」

「あのね〜、きむ・じょんひょん。よんしゃい。」

…今なんと?

「本当にキム・ジョンヒョンって言うの?お名前間違えてない?」

キボマが覗き込みながら男の子に問いかける。
「ん?じょんひょなはじょんひょなだよ?変なの〜。」
どうやら本気で彼はキム・ジョンヒョンと言うらしい…。質問して見ると…うん、受け答えがますますジョンヒョニひょんっぽいチビジョンヒョナ。
これはひょっとすると、ひょっとするかもしれない。

…ちょっと緊急の家族会議を開く事にする。取り敢えず、今日がoffで本当によかった。

「まぁ、仮にだよ。仮にあの子が本当にジョンヒョニひょんだったとして、なんでこうなっちゃったわけ?」
キボマの問いに、オニュひょんが答える。
「おそらく、コレのせいかと。」

オニュひょんが取り出したのは薄ピンクのいかにも怪しい小瓶。

「「「小さくナァル⁇」」」
「どっから持って来たのそれ?」
「ファンからのプレゼントの中に混ざってたみたい。んで、この部屋の机に開封済みの瓶と、取り扱い説明書が転がっておりました。」
…なんで、こんな怪しいもんを飲もうと思うかな?思い切りが良いと言うかなんと言うか。
思った事は同じだったのか、一斉に大きなため息を着くメンバー。
キボマの膝の上では、チビジョンヒョンがきゃっきゃっと楽しそうにはしゃいでいる。…はぁ。

「んで、効能のとこ読んで見ると、効果1週間〜一生って書いてあるんだよね…。」

「どういう事だよそれ?」

オニュひょんから取り扱い説明書を受け取り読んでみる。
「なになに、効能・子どもに戻ります。ステキなチャイルドLIFEをお楽しみください。持続期間は1週間〜一生。あなたが大きくなりたいと感じる度に体は少しずつ元の大きさまで戻るでしょう。…ってえええっ!一生このままな可能性もあるって事ですか⁉」

「…そう言う事。当分は風邪とか適当な言い訳で誤魔化せるとは思けど…それも長くは持たないし…。ああ!もぅ本当にど~う~し~よ~う!」
そう言って机に突っ伏したオニュひょん。キボマもアゴに手をあて、これからの事を真剣に考えている様だ。テミニも心配そうに皆の顔を交互に見つめている。そんな中、ぐるるるとお腹のなる間の抜けた音が響き渡った。

「おなかしゅいた…。」

音のした方を向くとお腹に手を当てて悲しそうに空腹を訴えるジョンヒョナが見えた。…かわい。

「あー、はぃはぃ。いったんこの話は終わり!取り敢えず朝ごはんにしよ。ジョンヒョナ〜。良い子にしてたらお母さんが迎えにくるからねー?好き嫌いしないでちゃんと残さず食べるんですよ~。」

「うん!ジョンヒョナいいこにする〜‼」
そう言ってキッチンに向かうキボマの後を小さな足をバタバタさせて追いかけていくジョンヒョナ。…かわいんですけど!ちょっと!萌えるんですけど!

「…ミノひょん顔キモイよ。」

「子どもに手を出すのは犯罪です。」
俺の事を心底軽蔑した様な顔をして見つめるオニュひょんとテミニ。
「ちょっと!2人して人を何だとおもってるんですか!」
「「変態」」
「失礼な!」
まだ疑う様に横目で睨む2人の肩を小突いて、俺もリビングに向かう。
これからどうなるだろ?そもそも何でこんな危険な薬をひょんは飲んでしまったんだろうか?…考えても仕方ない。本人があの調子じゃあな…。うん、とりあえずご飯にしよ。
こうして、ジョンヒョニひょんが元に戻るまで俺達は子育てに奮闘する事になったのだった。
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