長いお話

□幸せの形
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キラキラと輝きを放ちながら天に登って行く魂…。綺麗で、それでいて儚い人の一生。俺はその最後の見届け人。何百…何千人と最後を見届けて来た。そしてそれは、これからも変わる事はないと思っていた…。貴方に会うまでは。

「お兄ちゃん…!うっぐ…」
病室には、肉親の死を悲しむ遺族の姿。この何百年何度となくみて来た光景だ。俺の日常の一部。俺が手をかざすと、キラキラと祝福を受けるように男の身体が光を浴び、彼の魂は天に上がって行く。これが俺の仕事。この世での生を終えた魂が迷う事なく天にいけるようにサポートする。…俗に言う死神と呼ばれるものだ。「ふぅ、」俺はリストの書かれた本から彼の名前が消えたのを確認し、そのまま本を閉じた。悲痛に泣き叫ぶ女の子が目に映る。可哀想に…。見ていられなくなった俺は静かに病室をあとにした。いくら経験してもこの瞬間は気が滅入る。屋上に上がって風に当たる。あの男の魂は無事天国にたどり着けただろうか…。俺の仕事は天に導くのみ。そのあと魂が地獄に行くのか天国に行くのかは俺にはわからない。いや、あれだけ妹に思われているんだ…、きっと天国に導かれている事だろう。
そんな事をとりとめなく考えていると、屋上に人が上がってくるのが見えた。ここは、中々眺めが良く、風も気持ちよく吹き抜ける為、患者や見舞客も結構訪れる。この時も特に気にする事もなかった俺。

「こんなとこでなにしてんの?…てか、その服暑くね?」

その男が俺に話しかけてくるまでは。
「いや、そこまで暑さは感じないけど…って俺が見えるのか⁉」
確かに今の俺の格好は、全身黒尽くめのがっちりと着込んだスーツ姿だけど…ってそこじゃなくて、俺の姿は普通人間には見えないはず、なんでこいつ俺が見えてるんだ?
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