柳暗花明

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瑠衣がこの世界に来て、そして"奥州筆頭"独眼竜の伊達政宗の屋敷に住むようになって数週間が経った。

瑠衣はというと毎日一人部屋で閉じこもっているが、毎日毎日ある人物が必ず会いに来る。




『(そろそろ、アイツが来る時間か……)』




瑠衣がそう思っていると、廊下をバタバタと走る音が聞こえた。

それは次第に大きくなり、瑠衣の部屋で止まり、戸が勢いよく開いた。




「瑠衣、Good morning!」




現れたのはこの屋敷の主である伊達政宗。




『……毎回言うが、この屋敷の主が誰とも分からない奴に毎日会っても大丈夫なのか。』




瑠衣が来てからというもの、政宗は毎日瑠衣の部屋に来ている。
その姿を右目である小十郎はもちろん、彼の部下達も見ている。

彼等は、自分と主が共にいるのは心配なのではないかと瑠衣は思っていたのだ。




「Don't worry!アンタは心配しなくて大丈夫だ。理由は……まぁ、後々分かる。」


『(人間の考える事は分からん……)』


「なぁ、瑠衣。ずっとroomにいるのは暇だろ?そろそろ外に行かねぇか?」




政宗の言う通り、本当に瑠衣は外に出なかったのだ。

以前にその理由を尋ねると、『誰にも会いたくない。』と答えていた。

政宗は部屋にこもりっぱなしは駄目だと思い、毎回言っているのだ。




『……』




瑠衣は政宗の質問に無言だった。

政宗は「(今日も駄目か……)」と考えた。




「まぁ、無理にとは言わねぇよ。アンタが出たい時に出てくれ。」




政宗がそう言うと、外から「政宗様!」と政宗を探す小十郎の声が聞こえた。




「Shit!もう見付かったか……じゃあ、またな。See you!」




政宗は部屋を出ていった。




『懲りない人間だ……』




政宗が出ていった戸を瑠衣は見た。




『何故、俺に毎日会いに来るんだ……』




その時の瑠衣の瞳には、悲しみが宿っていた。






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