柳暗花明
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ある晩の、静かな森の中……
いや……静かではない。
何故なら……
「ギャァァァァ!」
人の叫び声が暗闇に響き、血の匂いが森の中に充満しており、周りに生えている木や葉、そして地面一面に血が飛んでいたからだ……
その中心部には、その叫び声や血の原因となっている人間が倒れている。
そして、その倒れている人間の近くににいるのは……
『……』
青い髪に赤い瞳という、珍しい容姿をしている青年。
その青年は容姿以外は普通の人間に見えるが、その左手の爪は鋭く尖っており、赤い血がポタポタと地面に垂れていた。
「ッ、この破壊者がぁ!」
周りにいた男が刀を鞘から抜き、青年に向かって斬り掛かってきた。
「仲間の仇!」
青年はそこから動こうとはしなかった。
それどころか、目を閉じてしまった。
「!ッ、俺なんか余裕っていうわけか!舐めやがって!」
男は青年の態度に苛ついて、無我夢中に青年に向かって行った。
青年はこのままでは斬られてしまう。
しかし……
−−−グサッ……
「かはっ……」
男は口から血を吐いた。
何故なら……
『くだらない……』
青年が男に左手を貫通させたからだ。
「ひと、ごろ……し……」
男はバタッと倒れ、死んでしまった。
そんな倒れた男を青年は冷たい目で見た。
『人殺し、か……』
青年は左手の血を見た。
『愚かだ……貴様なんかが、俺に勝てるわけがないだろう。』
左手に付いた血を払った。
『仇など、意味がない……命を無駄にするなど、馬鹿馬鹿しいな。』
青年はその場から離れようとした。
しかし……
「待て、破壊者。」
青年の背後から、新たな声が聞こえた。
青年は振り返らずに、歩く足を止めた。
†