読み物

□つばさウォー
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*腹黒羽川





放課後、委員長・副委員長として教室に居残り、アンケートの集計作業をしている最中にふと思い出した事を羽川に尋ねてみる

「羽川、戦争ってじゃんけん遊び知ってるか?」

「うん、第二次世界対戦を風刺して生まれたやつだよね
遊びではあっても痛みを伴う辺りがなかなか考え所だけれど」

当然のように知っていた

「お前はなんでも知ってるな…」

「何でもは知らないわよ、知ってる事だけ。中学生の時に友達とやった事がある位だし。で、なんでまた突然?」

微笑みながら羽川は問いかけてくる

「え、ああ、実はこの前火憐ちゃんに誘われたんだが…」

「あはは、きっと火憐ちゃんだと凄く痛かったんじゃない?」

「流石羽川、鋭いなあ」

やはり羽川には感服する他ない

「じゃあ、はい」

と言って羽川は自らの右手を僕に差し出してきた

「…はい?」

「あれ、やりたかったんじゃあないの?」

「あー、いやちょっと何となく気になったから訊いてみただけで…」

「そうなんだ…でも実際にやった事はないんだよね?」

「まあ…」

「ならやろうよ!私も久しぶりにやりたいし」

素敵笑顔の羽川
断る理由は皆無だ

「じゃあ…」

差し出されていた羽川の右手を握る
火憐ちゃんの時とは違いドッキドキな僕である

「じゃあえっと最初に掛け声を…」

にぎにぎ…

「…………えっと……羽川…さん?」

にこにことした表情のまま羽川は何も言わず、僕の手をにぎにぎしている

「羽川…」

「ああ、ごめんごめん阿良々木君。ふふ、まさか阿良々木君が本当にやるって言うとは思ってなかったからさ」

八九寺顔負けのはにかみ笑顔で羽川は言う

「ご、ごめん」

とりあえず謝っておく

にぎにぎ…

「え、っと…仕事の続き、するか」

「んー?」

まさかの知らんぷりだった

「…羽川、手離さそうぜ?」

「あれ?もしかして阿良々木君は好きな女の子以外の手は握りたくなかった?」

「、いや違…」

「そっかそっか、ごめんごめん、私ってば阿良々木君の嫌がる事しちゃったんだね」

おやおかしい!戦争をする為に手を繋いだのに話の主旨がが変わってないか!?

「そんな事ないです!僕は好きな女子じゃなくても羽川さんとなら手を繋ぎたいです!!」

「…ふうん、 好きじゃなくても、ねえ 」

羽川の目が少し細まる
そして不敵に微笑んだ

「でもだったらこのままでいいよね」

「え…」

改めて羽川は、よりぎゅっと力を込めて、僕の手を握った









結局この日、校門を出るまで羽川は僕の手を離してはくれなかった




《好きな人をからかいたくなる、子供心》

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