読み物
□かれんウォー
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自室で大人しく歴史の勉強をしている最中、僕の元へ大きい方の妹こと火憐ちゃんがやって来た
「なあなあ兄ちゃん、戦争しようぜ!!」
「…火憐ちゃん、戦争は悲しみしか生まないぜ」
突っ込み所が多すぎるので、取り敢えずここから言っておく
そもそも火憐ちゃんと戦争なんてしたら即死だ
「いや兄ちゃん、その戦争じゃなくてだな…」
―――てか人が死ぬような事、あたしが許さないし
男前な笑顔で火憐ちゃんは呟く
「格好良いのは構わないのだけれど、じゃあ火憐ちゃんのいう『戦争』ってなんなんだよ?」
「ん?じゃんけんだよ」
「じゃんけん?」
「そーそー。グーチョキパー!」
ジェスチャーを交えて叫ぶ火憐ちゃん
「つまり火憐ちゃんの言う戦争ってのは、じゃんけん遊びの一環って事か」
「そう言う事!流石あたしの兄ちゃんだぜ!!で、やらない!?」
「そうだなあ…」
まあそろそろ勉強も休憩でもしようと思っていた所でもあるし
偶には付き合ってやるか
「やるのは構わないのだけれど、僕はルール知らないぜ?」
「おう!そこは安心して、この天才空手家火憐ちゃんに任せろ兄ちゃん!あたしがばっちりレクチャーするぜ!!」
「そうか…」
果たして空手とじゃんけんのルール説明にどんな共通点が有るのかは知らないが、触れないでおいてやろう
実際にやりながら説明を聞く
「まず向かい合ってお互いに片手を繋ぐんだ」
火憐ちゃんの右手と僕の右手が繋がれる
急に僕の心拍数が速くなった
様な気がする
いや、ただびっくりしただけだよ気のせい気のせい
だって普通じゃんけんで手なんて繋がないし
火憐ちゃんの手って以外とちっちゃくて、ああやっぱり女の子なんだなあ…とか断じて思ってない
「んで、『戦争』って言ったらもう片方の手でじゃんけんして、勝った方が親になる」
僕はグー、火憐ちゃんはパーだった
「そっからは親が主導権を握ってて、グーが軍艦でチョキが朝鮮、パーをハワイって呼んで、じゃんけんするんだ
「じゃんけんしてて勝った方に主導権が変わってく形でこのへんは普通にじゃんけんしてく
「テンポはカレーライスとかグリンピースと同じ様にな
「で、じゃんけんしててあいこになったら、それまで親だった方が握ってる相手の手を、叩く」
「え…」
ばっちん!!
火憐ちゃんは左手を振りかぶり、僕の右手を叩いた
「ぐあっ!!」
なんだこれ、思わず少年漫画の主人公のようなリアクションになってしまう程の激痛。手から全身へと、痛みが広がる感覚。まるで春休みのような…
一言で言えば火憐の遠慮の欠片も無い、ただの馬鹿力だった
きっと本来はもっと、ぺちっと軽く叩く様なアットホームなじゃんけん遊びなのだろうけれど、この場合は命の危機すら感じる
「三回連続で手を叩かれたら、要は三回連続であいこになったらおしまいだ。どう?やらない?」
「絶対にやらない!!」
「ええー!!なんで!?」
「こんな事したら鉛筆持てなくなるわ!!」
「遊んでよ、にーいーちゃぁんん!」
「だったらもう少し叩く力を遠慮しろ!!」
「あー、そりゃ無理な相談だな。あたし、勝負事はなんでも全力投球!!だからな!」
「勝ち目ねえ!」
《戦争、ダメ絶対》