読み物
□ひたぎランチ
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《お昼休み、2人だけの時間》
※バカップル注意報
いつもより長く感じた3時間目の体育に、4時間目の苦手な英語も無事終了し、昼休みの時間となった
四時間目にもなるとすっかり空腹になっており、誰にとっても至福の時間だ
僕は出会って以来、戦場ヶ原とこの時間を過ごしている
「阿良々木君、今日は天気が良いから教室で食べましょう」
「ああ、悪いな」
「なに言ってるの。天気の良い日は皆外に食べに行くから教室が空いていていいと思ったのよ。誰もあなたの心配なんてしていないわ、自惚れないでくれるかしら」
「…そうかよ」
言われながら僕は戦場ヶ原はの前の席の椅子に座る
戦場ヶ原の机の上には二つのお弁当
どちらも戦場ヶ原の手作りである
薄紫色の包みにくるまれているのは戦場ヶ原の分で桃色の包みにくるまれているのは僕の分だ
今までは、私立中学校に通う月火ちゃんが火憐ちゃんと僕の分も作ってくれていたのだが(僕は公立中学だったのでお昼は給食だった)付き合い始めてからは
「私の料理は神原に言わせると独特な味らしいの。だから将来の為に慣れて頂戴」
との事で、今は毎日戦場ヶ原がお昼を作ってくれている
始めは悪いと思い遠慮ししようとした所、逆に怒られたので今は有り難く戴いている次第だ
ちなみに味は個性的な味というよりは薄味
初めは受け付け難いものだったが、家庭環境のために中学時代からは自分でご飯を用意しなくてはならなかった彼女である
味付けの仕方など誰にも教われなく、料理の上達の方が優先順位は先だったのだろう
結果淡白な味に慣れてしまった
考えれば単純な事であるし、各言う僕も本当に慣れたので問題なし
さて包を開けるとそこには、そぼろで彩られたクマ・ご飯の白いネコ・野菜や果物のお花など、気合いの入ったキャラ弁が姿を現した
「今日のお弁当はいつもより時間をかけて作ったのよ」
鉄面皮ちゃんな戦場ヶ原は少し微笑みつつ、自分の方の包を開きながら教えてくれた
戦場ヶ原のお弁当は普通のそぼろ弁当
色んな意味で食べづらい戦場ヶ原の思いのこもったお弁当を本日も
「いただきます」
食後は大抵、話をしたり次の授業の準備をして時間を過ごすのだが、今日は気まぐれにいつものお礼としてお菓子を持ってきてみた
「戦場ヶ原、食うか?」
「あら、阿良々木君にしては気の効く事をするのね。有り難くもないけれど、戴くわ」
僕が持ってきたのは、神原から聞いた戦場ヶが好きだという一口サイズのチョコレートで菓子
戦場ヶ原も女子
甘いものが好きなのだ
「じゃ、はい」
ひとつつまんで戦場ヶ原に手渡そうとして
「ん」
しかしそのまま戦場ヶ原の手に渡ることなく、お菓子は戦場ヶ原の口に収まった
もといお菓子をつまんでいた僕の指ごと食べた
「っ、…!?」
驚いて手を引き抜こうとする僕より先に戦場ヶ原は僕の手首を捕らえた
…唯一の救いは天気が良いので教室に生徒が少なく、また席が目立たない所にあるので目撃者が少ない事だろうか
戦場ヶ原は僕を見つめてくるので目を逸らしつつ、思考を切り替えるのに必死だった
幾らか時間が経ち、溶けて僕の指からチョコレートの感触が無くなった事に気付き戦場ヶ原の方を見れば、あっさりと口を開いてくれた
しかし手首は離してくれない
「阿良々木君ってば本当に馬鹿でどうしようもない童貞野郎ね」
「…っるせ」
「顔も赤くなってるわよ」
「、なってねえよ!」
「あら、指にチョコレートが着いてる」
そう言うと再び戦場ヶ原は僕の指を舐めた
「!、洗うからやめ…」
「ごちそうさまでした」
少し笑って愉快そうに戦場ヶ原は口を離した
「何、阿良々木君。手を洗ってきたら、いいんじゃない?」
「っ、言われなくとも!」
今更ながらに動揺を隠しつつ、僕は廊下に出た
僕は本当に馬鹿である
何だって彼女が笑えば、それはとても可愛くて
だったらそれでも良いなんて
《恋は思案の外》