読み物

□ひたぎレスト
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《10分休憩後、現国》
*二言目の歌詞ネタ







僕の席は窓側、前から数えて3番目の位置にある

窓側の席は人気が高い
僕だってつい1年程前までは、授業中窓の外を見て暇をつぶしたり出来たので、席替えで窓側の席になれたら喜んだものだった

しかし残念ながら過去形である
今の僕にとっては今一番の敵であるといって良い程だ

吸血鬼の後遺症のひとつ、太陽が苦手

日常的に、例えば歩いている時や体育の授業の時なんかは特に問題無く過ごせるのだが、じっと浴び続けると辛いのである

いや本当にカーテン様様なのであった









「阿良々木君、次の現国の時間の時に少しカーテンを開けておいて貰えないかしら」


数学の授業が終わって、2時間目が始まるまでの10分休憩中に戦場ヶ原からそんな事を言われた


「僕の事を分かっていて尚、そんな事を言うって…お前は鬼か」

「何を言っているのよ、鬼は貴方でしょう」

「まあ、そうなのだけれど…」


しかしいくら午前中とはいえ、7月に入り日差しが強いこの時期である

また、タイミング悪く昨日忍に血を飲ませたばかりなのだ
堪えることは出来たとしても、次の3時間目が体育と言う事も考えると勘弁して欲しいというのが本音だった


「とりあえず、理由は何なんだ?」

「3時間目が体育の授業だからよ」

「………それだけ?」

「それだけよ」

「意味が分からん!駄目に決まってんだろそんなもん!!」


そんな訳の分からない理由の為に比喩じゃなく死ぬような思いして堪るか!


「1時間目、私に宿題を見せてくれと頼んできたのは誰かしら」

「っ!いや、しかし…ほら!カーテン開けちゃうと他の皆まで眩しくなっちゃうだろ?だから…」

「安心して。まだそんなに日は高くないから眩しい思いをするのは阿良々木君だけで済むわ」

「間違いない!お前は心が鬼だ!!」


しかし宿題を見せて貰ったのも事実である


「………分かったよ。30センチ位でいいか?」

「ええ、ありがとう」


そうして戦場ヶ原は、窓側から二列離れた後ろから二番目の自分の席に戻っていったのだった


…理由は分からないままに










授業中、夏の日差しに当てられ意識朦朧とする中、一度だけ戦場ヶ原が現国教師に当てられたのに気が付いた


「こら戦場ヶ原さん。外の体育の授業ばかり見ていないで、ちゃんと板書しなさい」


………ああ、外で神原が体育でもやっていて、きっと戦場ヶ原はそれを見たくて…

僕の頭の中はそんなあやふやな思考回路を作り上げていた

そして気付けば戦場ヶ原がカーテンを開けたがった理由が『体育』の二文字のみに変換されていたのだった













『3時間目が体育の授業だからよ』

だって一時間、貴方の事を見れないんだもの

ガラスに映る君を見て――




《内緒の話》

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