BOOK

□休日
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「あっ、真田の旦那はどうしたんですか?さっき鍛練から戻ったのを見ましたよ?」

大将と旦那、暇が出来るとよく二人で茶屋に行っていることを知っていたから。

だからこそ、この頼みに疑問を持った。何で俺なのかと…。

「旦那呼んで来ましょうか?」

きっと大将は旦那が戻って来たってことを知らなかったんだな…。そうだ、そうだと自分で納得をさせていた。

暫くの思想のあと、そう思い旦那の自室へ早速駆け出そうとした。



瞬間だった――



止まる俺の足。

一瞬の制止の後、引き戻される身体。



「うわぁっ!…大将?」

「よい」

「え?」

片手を掴まれて一気に大将の元へ戻る身体、勢い余ってぶつかりそうになったが…

いつも軍配斧を振るう大きな腕が、優しく受け止めてくれた。

突然の出来事に頭が働かなかった。

大将の言葉の意味も理解出来ずに、思わず疑問の声をあげた。

そんな俺に、大将はまた難しい顔を見せた。そして、やっぱり言い恥ずかしいそうに口を開いた。



「佐助、お前と行きたいのじゃ」



そう言いながら微笑む大将。

その笑顔は今俺を受け入れてる腕のように優しくて。

心が温かくなった。



(ん、何だ……?)



「それは勿論良いですけど…またどうしてなんですか?」

うん。そうだ、普通何でまた忍びの俺なんだ?

「いや…」

片手で自身の顎を触り視線を空へと移動、そのままほんの少し間を置くと改めて俺に向き直った。

「忍も息抜きせんといかんと思うてのう」

「!?大将…」

照れ臭そうにそう言う大将に、気が付くと俺の顔も綻んでいた。



(あれ…まただ、また)



じんわり胸へと込み上げるくすぐったくて温かい感情。

熱が集まる箇所を手の平でなぞりながら、俺は一人首を傾げた。




なんだこの感情……?


これは…何だ…




懐かしい?
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