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□嫌い?
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あの方を守る。あの方の為に…
その為にあの方に出会ってから今まで生きてきた。でも、もう…その為に生きる必要は無くなった。あの方は、私の目の前で逝ってしまわれたんだ。手の、届く距離で、武田信玄に討たれたのだ。 そう…私の目の前で……討たれたのだ…
あれから何日が経ったのか。武田信玄の城にあるこの地下の一室に鎖で繋がれ猿轡を噛まされて以来、日の光など見たことがない。
ジャラ…ジャラン…ガチャ……
キィイ……
扉が開いた音が聞こえた。
私の知ってる人の影だった……
「かすが、つまらない意地張らないで降伏しちゃいなよ?里に居た時みたいに俺と一緒に働こうぜ?」
ああ、いつものヘラヘラした顔じゃない私を見下す目で見ている。同郷の忍びが憎い。私の動く心臓が、吐いて吸う息が、巡る血が、何もかもが不愉快だ。 生きている自分が憎い。死にたい。いっそのこと、殺してくれ。
「お前が大嫌いだ!………私は…あの方だけに…戦うんだ…」
だから、殺してくれ
何もかも無くしてくれ………
あぁ…
謙信さまぁ……