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□貴方があの方であれば…
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ふわりと帰蝶が動いて、髪の匂いが一瞬だけ漂った。それはいつもの匂いとはいえ違っていて、とても帰蝶に合う花の香り……。
聞かずには、居れず聞いてみた。


「シャンプー、変えましたか?」

少し驚いた顔をした…
しかし、直ぐにいつもの顔になった。
「あら…、気づいたの」

私は、帰蝶にしか見せない優しく微笑んだ。
「いつもと匂いが違いますからね…」

「そう、」

帰蝶は少しだけ微笑んでソファに腰掛ける。

「上総介様は、気づいてくださらなかったわ…」


穏やかな午後に、穏やかな声。でもその声は悲しみが溢れてるような気がした…複雑なものだ…。


「光秀が、上総介様なら良かったのに…」


帰蝶の艶やかな唇からこぼれた呟きを、私は聞かなかったことにした。





(私は貴女がそんな顔をするのを見たくありません……胸が…痛い……。)

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