遊魔SHORT

□光の正体  後編
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そういえば、俺はあの夜……目は開いていたけどかなり酔ってしまって、意識が朦朧としていたのを思い出す。もちろん、見えるものは見えるし、幻覚を見るほどではなかったけれど……それでも、その時の精神状態はとてもマトモとは言えないと思う。



……まさか、そのマトモではない状態を……!




「あーあ、見られちゃった」
「!……大倉!!」




ビデオカメラに見入っていた章大は、風呂から上がってきた大倉の存在に気付くのが遅れ……勝手にカメラをいじり、大倉が隠し撮りしていた写真を見ていた姿を完全に目撃されてしまった。




「章ちゃんが見てた光っていうのは、全部このカメラのライト。しっかり撮らせてもらったよ……章ちゃんの恥ずかしいす・が・た❤」
「ちょっ……大倉!!なんてことすんねんよ!!」
「なんてことすんねんって、章ちゃんが言う資格ないで?俺、章ちゃんがひどいことしたから仕返ししてるだけやもん」
「……え!?」





覚えのない章大は目を見開いた。受けの自分が大倉に何かするなど……決してあり得ないことだ。



しかし、大倉の瞳に嘘はない。そこまで根には持ってないようだが、やや本気の混じったむくれ顔からは嘘を言っているようには思えなかった。





「……俺、何をしたん?」





もしも俺が酷い事をしたんなら、大倉にちゃんと謝らなかったらあかん。まるで身に覚えがないが、章大は顔をあげると……少し不安気に大倉に問いかけた。




「………」




大倉は無言でパジャマの袖をまくりあげると、筋肉がついて引き締まった二の腕を見せた。





「……あ」




そこには、まだ赤黒くなったままの……大量の歯形が存在していた。





「酔うと噛み癖のあるマルの傍に、いけにえとして俺を置いといて……部屋に逃げ帰ったんはどこの誰かなぁ??」
「……ごめん、大倉……」




これは本当にすまないことをした……





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