空と雲と雨と

□第一話
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最近、巷では真選組に纏わる数々の噂がたっていた。



『あの真選組にやけに腕の立つ“女隊士”がいるらしい』

とか、

『真選組の女隊士は、あの一番隊隊長の沖田にも負けず劣らずの実力を持つとかー…』

とか、

『真選組の女剣士は、吉原の太夫達も隠れたくなるような美人とかー…』

とか。


何れもあっているし、
何れもあっていない。


あくまで噂にすぎない、真選組の『女隊士』の噂だが……。

すべての噂に共通しているのは、『あの』真選組に、『女』隊士がいるということだ。


かつては、


『あの真選組に“女剣士”なんているわけ無いだろう?』


……少し前まではなんている奴等もいたが……。

おそらくもう、どこにもいないだろう。
いや、いないハズだ。

なぜならば、(特に)攘夷志士の奴等は、攘夷に関していた奴等は、彼女をはっきりと『見た』からだ。



漆黒の美しい髪。

黒色の瞳。

白い肌に、薔薇色の頬。



銀色に光る剣を振りかざして戦い、黒い髪と黒い瞳、黒い隊服から彼女はこう呼ばれた―…。












“緇衣姫(しえひめ)”

―――と。



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