帝都学園日記

□Before Enter
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「じゃぁ、たぶん受かったと思うよ。俺はそんなに面接できた覚えなかったし」
「私も自分が受けたときは面接があまりできませんでしたし」
二人は生徒たちから面接の様子を聞いてそう言った。
「よかったぁ……」
ナップは少し涙を浮かべてそう言う。
「あら、私は絶対大丈夫だと信じていましたから別に何とも思いませんわ。だって先生が教えてくださっていたのですから。受かって当然ですわ」
「先生だからこそ私もここまで頑張れたんだって思います」
「僕もアリーゼの意見に賛成かな。じゃなきゃこんな余裕で試験を終えることにならなかっただろうね」
ベルフラウやアリーゼ、ウィルも各々そう分析した。
「あら、褒めても何も出ませんよ?」
アティは少し顔を赤らめてそう言った。
「まぁ、これで入学はほぼ決まったんだ。次の招集はまだまだ先だろうから少し島に戻ろうかと思うんだけどどうだろう?」
ウィルが唐突にそう切り出す。
「あ、それには賛成ですわ。味気ない毎日だったからお姉さまたちが待つ島に戻りたくなりましたわ」
「あら、私もパナシェくんたちに新しい話を書いたのでそろそろ披露しに行きたかったところです」
「オレも島でスバルたちと思いっきり走り回りたいって思ってたところだぜ。それに入学まで体を動かさずにいると戦闘能力が下がりそうだぜ……」
「僕もそれには同感かな。テコと一緒にのんびり島を散歩したいとも思っていたところだし」
「そういえばカイルさんがあさってパスティスに来るといっていたような気が……」
「じゃぁ、決まりだよね」
ウィルがアティの言葉を受けてそう言った。
「アルディラお姉さまたち元気かしら?」
「子供たちきっとアティ先生やレックス先生の帰りを待っていると思いますよ」
「うわ〜い♪またあいつらと遊べるんだ〜〜〜」
全員が全員歓喜に沸いていた。
 
 翌朝、彼らは帝都を出発した。
「といっても、どうやってパスティスまで行くんだい?」
ウィルが唐突にそう尋ねる。
「え?ええと……」
アティが答えに詰まっているのを見て彼はあきれたように言う。
「まさか……考えてなかったとか??」
「その、まさかだったり……」
「嘘でしょう?パスティスまでとんでもない距離なのに……」
ベルフラウがめまいを感じてその場にへたり込んだ。
「あぁ、俺がワイヴァーンを召喚するからそれに乗ってパスティスまで行けばいいさ」
そう言ってレックスは緑の召喚石に手をかける。
「レックス先生!ここでワイヴァーンを召喚したら大騒ぎになりますから……」
アリーゼはそう言って彼を止める。ここは街の大通りのど真ん中だった。
「あ……郊外まで出ようか?」
「それか列車で行ってもいいと思いますけど?お金ならありますし。たまにはゆっくり列車に揺られるのも悪くないんじゃない?」
ベルフラウは駅のほうを見ながら言った。
 
 結局、彼女の提案で全員で列車に乗ることになった。
「さて、みんな荷物を持ったし、忘れ物はないね?」
レックスがそう聞く。
「ないわよ」 「もちろんです」 「ないかな」 「あ、……ないよ」
「ナップくん、驚かせるようなことをしないでくださいな……」
アティはそう言って先頭で列車へと乗り込む。あとから生徒が続いて乗り込んだ。最後にレックスが乗り込んで列車は出発した。

「う〜ん……気持ちがいい風ね」
ベルフラウは開けた窓から入ってくる風に髪をなびかせる。アリーゼも髪のバンドを解いて風に髪を任せている。
「うん、ベルフラウちゃんじゃないけど風が気持ちいいですね。列車も悪くないなって思いますよ」
「そうだね、ゆっくり地上から行くのも悪くはないみたいだね。これなら夜には工船都市までつくだろうし」
「たぶん、順調にいけば夕方には到着するな」
レックスは時計を見ながらそう言った。
「あぁ〜、ソノラ姉ちゃんたち元気かなぁ?」
ナップが懐かしそうにそう言う。
「あぁ、多分な。カイルは体が丈夫だしスカーレルも組織でひどい環境にも慣れているって言ってたし、ソノラも海賊だしな」
「ということはヤードさんだけがちょっぴり心配ですね」
「でも、特段誰も体調を壊したなどという記述もなかったし大丈夫だろう」
レックスはそう言いながら窓の外を見つめていた。

結局、夕方の遅い時間帯にパスティスには着いた。
「さて、夕飯を食べて今夜の宿を探さないとね……」
レックスはそう言って荷物を片手に歩き出した。生徒とアティが後から続いた。
 すぐに海鮮料理屋さんへと彼らは入って夕食を食べ、近くの宿に部屋を二つとることに成功した。
「さて、明日は早い時間に起きなくちゃいけないから早く寝ようか」
レックスはそう言って早時間に部屋の明かりを消してベッドへと入った。ウィルとナップも同じようにベッドへと入った。
 アティの部屋も入浴後髪をよくとかして乾かした後すぐにベッドへと入り寝た。
 
 翌朝。
 彼らは、日が昇る前に起床し宿で朝ごはんを取る。
「なんで、ここの宿はこんな朝の早い時間から朝ごはんを用意してくれたのでしょうか?」
アティが席についてそうレックスに訊いた。
「ここの宿は割と旅の行商とかが泊まるらしくて、そういう人たちって朝から場所取りとかしに行ったりするじゃないか?それに対応するためにこうなったらしいよ」
「まぁなんにせよありがたいかな」
ウィルは朝食を食べながら言う。
「うん、おいしいと思う」
「そうですね」
「悪くないわね」
「そうだな」
兄弟はナイフとフォークをうまく使って朝食を食べている。
「朝食を食べたらちょっと早いけれど宿を出ようか。カイルたちは多分もうついてるはずだから」
「やっぱり早い時間じゃないと厳しいんですね」
「?」
レックスとアティのやり取りを聞いていたウィルは首をかしげた。
「どういうことです?」
「あぁ、最近工船都市の港の出入りが厳しくなってるらしいんです。なんでも海賊船と軍船は許可がないとは入れないとか……。夜は例外なんですけれどね」
アティはそう言う。
「たしか、その管理が始まるのが日が昇ってすぐだとか聞いたから、早くしないと船に乗れなくなるぞ」
レックスは食べて終えて部屋の鍵をもって席を立つ。すでに食べ終えた生徒やアティたちも立ち上がって部屋へと戻って行った。
 すぐに彼らは宿をチェックアウトし、船着き場へといった。見慣れた船が一隻停泊していた。
「お〜い、先生たち〜〜〜〜」
船の上から声がかけられる。
「あ、ソノラ。久しぶりだね」
「みんな元気そうでよかった〜〜、さ、早く乗って!早くしないと出航できなくなるから……」
ソノラはそう言って東の空を差す。少しずつ明るくなってきていた。
 すぐに彼らは船へ乗り込んで行った。
「全員乗ったし荷物も載せたよ」
ウィルが船着き場を確認しながら言った。
「んじゃ、アニキに出航するように伝えるよ」
「お願いします」
アティはそう言って以前自室だったところへと向かう。そこは以前のままだった。
「荷物はここへ置いてね〜」
「オレ荷物置いたら甲板の見張り台にいく!」
「じゃぁ私は船長室へお邪魔しようかしら?」
「私は船首へ行こうかな……」
「僕はスカーレルさんやヤードさんとお話ししてようかな……」
生徒は各々好きな場所へと向かっていった。
「あらあら、もう元気いっぱいですね」
アティは生徒たちが走って行く後姿を見ながらそう言った。
「俺たちはとりあえずいつも食事をしていたところに居ようか」
「そうですね」
アティとレックスはそう言って船首のほうへと向かっていった。
 ほどなく船は港を出港した。
「ふぅ〜、なんとか日の出までに出航できたね」
ソノラは紅茶を入れながら言った。スカーレルやヤードもいつも会議などをしていた場所にいた。
「あら、先生お久しぶり!元気そうじゃない?子供たちの試験はどうだったのよ?」
スカーレルはそうレックスとアティに訊く。
「ええと、たぶんもう合格とみて間違いないですね。本人も合格を確信してましたし」
「そうですか。皆さんと久しぶりにお会いできてうれしいですよ」
ヤードがソノラの入れた紅茶に口をつけながらそう言った。
「ヤードさんたちも元気そうで何よりですよ。カイルさんにもあとであいさつをしておかないといけませんね」
「おぅ、レックスにアティ。元気そうだな」
アティが席を立とうとした瞬間船長室から本人が現れた。
「カイルさん!!」  「カイル!」
「なんだよ、その俺を待ってました見たいな顔は……」
「いえ、久しぶりですしね」
「なんか自分の居場所へ帰ってきたような気がするよ」
「そう?うれしいこと言ってくれるじゃない」
「そうよね、もうここは先生の家同然なんだもんね」
ソノラもうれしそうに言いながら座った。
「そうだよ、島のみんなは元気そうかい?」
レックスがそう聞く。
「あぁ、元気そのものだぜ。子供たちに先生を迎えに帰ると言ったら子供たちがさっそく歓迎の準備をするようにミスミ様あたりに言ってたぜ?」
「うんうん、たぶんとんでもない大きな宴会してくれると思うよ?おさけがいっぱいでるんでしょうね♪」
「ソノラさんの魂の輝きが……」
アティはその目の輝きにあきれた。
「おおっと、俺はかじ取りがあるから早く船長室に戻らねえと」
「あ、私もいいですか?」
アティはおずおずと尋ねる。カイルはいいぜと言って船長室に消えて行った。彼女もすぐに彼を追う。
「さて、あたしは見張り台へ行こうかな。ぶつかるととんでもないことになるしね」
「あら、じゃぁアタシもお邪魔しようかしら」
「たまには私も……」
「じゃぁみんなで行こうか」
レックスはそう言ってソノラを先頭に食堂を出て行った。
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