忌まわしき遺産

□決戦
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ミモザが絶句する。それを何とかする方法が彼女にはないのである。ギブソンも同じだった。それが悪魔のカスラである以上彼らには何ともできないのである。
「わたしが行きます!!」
アメルが前面へと出る。アメルが魔力を放射すると怨念の集合体は容易く消えた。
「悪魔のカスラであるならわたしが何とかできるはず!!」
―――守りたい、みんなを、この世界の笑顔を……―――
アメルが手を合わせると翼が現れる。そこへソルが叫ぶ。
「制御盤を浄化しろ!!制御盤がカスラに乗っ取られている!!それさえ浄化できれば暴走そのものが止まるはずだ!!」
「でも……どうやって……」
「ボクが手伝うよ、機械そのものならボクの得意分野だし、エスガルドもいるしね」
「任セロ」
アメルの横からエルジンとエスガルドが現れる。
「いくよ、お姉さん!」
「……は、はいっ!」
エルジンがエスガルドと協力して制御盤の構造を解明していく。
「ここだね、カスラに乗っ取られている基盤部分は……」
「アメル殿、ココナノダガ、大丈夫デアルカ?」
「僕たちがそこへ魔力をおくる回路を開くからお姉さんは浄化の魔力をお願い!!!」
エルジンとエスガルドが装置もとい遺跡に干渉する。
「エルジンくんとエスガルドさんを!!」
アヤが叫ぶ。彼らは今遺跡に干渉するので手一杯であり全く交戦できない状態だ。
「わたしたちは何とかしますから、あの三人を援護してください!」
「俺らは何とかするからあの三人を助けてやってくれ!」
ソルとアヤが同時に叫んだ。わかったとジンガがいい、スウォンもわかりましたとエルジンのもとへと行く。
「させない……」
アメルが浄化の方に手を取られている際に再び結集した怨念の集合体は自らのカスラを削り取りそれを風に乗せてエルジンにたたきつける。
「させません!!」
人間が受けたら死ぬであろうカスラの風をアメルがまともに受ける。
「っくぅ……」
彼女の顔が苦痛にゆがむ。純粋な天使としての体でない彼女にはカスラの風はつらい。
「お姉さん!!」
「急グゾ、えるじん!」
エルジンは解析と干渉の速度を上げる。
「エルジン危ない!!」
「うひゃぁ!!」
その間に新たに将来した悪魔が彼らを襲う。主に襲うのはエルジンのほうであるが。
「うらぁ!!往生際が悪いんだよ!悪魔の残りかすだろうが!!!さっさと消え失せやがれ!!!」
「エルジンさんには指一本触れさせませんよ」
そこへジンガとスウォンが割って入る。彼らがエルジンとエスガルドの代わりに応戦する。
「ギブソン、私たちも負けていられないわよ!召喚ペンタくん、吹っ飛びなさいよ!!」
「召喚、ツヴァイレライ、引き裂け!!」
「つながったよお姉さん!今だよ!」

「わかりました!」
エルジンは回線を維持するために魔力を消費している。そんな彼の精神の上にアメルの強力な浄化の魔力が乗ってくる。それはエルジンの精神を通してエルジンが開いた回路を通じ制御盤を媒体とする魔力増幅装置を浄化してゆく。さらにエルジンが開いた別の回路により制御盤に魔力を供給している魔力媒体までも浄化する。
「これで行けます!!」
アメルによる宣言が行われる。
「く、くるな!」
さっきまで余裕な態度であったそれが怯えて言う。それは魔力を補給しようがなくなったためもはや召喚術に対する防御ができないうえに防御壁も構築できなくなったのだ。さらに先ほどまでは受けたダメージを即座に回復させることでダメージを受けてないかのように見せていたのだが回復に用いる魔力も今や魔力媒体が天使の聖なる魔力に満ちているためそれには使えない。
「今度こそは、チェックメイトかしら?」
ミモザがニヤニヤしながらそれを追い込む。
「そうですね、チェックメイトのようです」
「とっとと終わらせようぜ、召喚ゼルゼノン、レヴァティーン。バベルキャノンとギルティブリッツ、あばよカスラの実像化」
ソルがそういうと彼の召喚術が発動する。もはや守る術も回復の術もないカスラの結集に耐える力などなかった。ソルの召喚術によってそれは易々と滅びた。
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