忌まわしき遺産

□森の奥へ
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「私は先に進むべきだと思います」
「俺も賛成だな。ここにいても別にとくに得することもないだろうし。食材はないからかまどがあったところで何も作れないしな」
「わたしもそれには賛成です。できるだけ先に急いだほうがいいと思います」
「ボクも進むことに異論はないよ、どうせ悪魔が襲撃してくるだろうからここにいても寝れないだろうし」
「おれっちも先に行く。野宿には慣れてるし」
ほとんどの人が賛成する。ミモザは私は寝たいわぁ、とさいしょ言っていたがエルジンの言葉を聞いて意見を撤回した。
「では食事が終わったらすぐに出発しよう」

 食事が終わった一行は小さな村のはずれからさらに森の奥へと入って行った。
「しっかし、ここからも全く道らしい道がないなぁ、召喚フレイムナイト、ジップフレイム」
エルジンがぼやきながら木を焼きながら一行が歩く道を作る。
 じきに日が暮れた。
「ちょっと暗くて歩きづらいぜ、どうするんだ?ブラーマでも召喚すればいいのか?」
ソルはエルジンに尋ねる。現在先頭はエルジンとエスガルドであるからだ。
「あ、できたらお願いしていいかな?手元の地図が見づらくなってきたから」
ソルがブラーマを召喚する。
「いや、ランプもってきたんだけど?」
ミモザがエルジンにランプを差し出した。
「ずっと召喚してると疲れるでしょ?」
ソルに暗に送還することを勧める。エルジンにもランプで十分だよと言われたので彼はお礼と謝罪をして送還する。
「敵ノオ出マシダ」
エスガルドがもう何十回目かのセリフをぼやく。
「しかたないわねぇ、遊んであげるわ、行きなさいエイビス」
先頭のエルジンではなく今回はミモザが対応した。彼女の召喚したエイビスが敵を倒す。
「ふぅ、こんなもん朝飯前よ」
「いやぁもう晩飯なんじゃないのか?」
あぁもう!ソルに突っ込まれたミモザは憤慨する。いちいち突っ込まなくていいわよ!とソルはひじ打ちされた。
「しかし、足元が見辛くなってきて歩きづらくなってきましたね……」
若干アヤは疲労感をにじませて言う。同じく疲労がたまっているソルも同調する。
「そうだなぁ……そろそろ一回休憩を入れてほしいんだが……」
了解シタとエスガルドが言って木を一本ちょうど良いくらいに幹から切り飛ばす。簡易式のベンチというわけだ。さらに切り倒した木を細かくする。エルジンがその間に近くを流れる川から石を集めてくる。彼はそれを切り株の近くへ集める。さらにエスガルドが何本か木を伐採して新たにベンチを作る。そのベンチの中央へエルジンが石をくみ上げた。
「ふぅ、完成かな?」
エルジンが言う。彼の目の前には即興で作ったかまどが、周りにはいくつかのベンチがある。
「すごいです、ありがとうございます」
アヤはお礼を言いながらそのベンチの一つへと座る。
「ジップフレイム」
エルジンがみんなが座ったのを見てエスガルドが加工した薪へ火をつける。かまどの中で火は盛んに燃えた。どこからかアメルがポットを取り出してきた。
「あ、おれっちが水を汲んでくるよ」
ジンガがアメルのやろうとしていることを察していう。アメルはじゃぁ、お願いしますねとジンガに任せた。
「しかし、かなりの距離があるなぁ。アメルさん、あと目的地まではどれくらいあるかな?」
ギブソンも割と疲労がたまっていたみたいでアメルに質問する。
「気配の源はこの先の山の中腹です、まだ山のふもとですのでこれからもっと体力的にしんどくなると思われます」
アメルがそう告げる。ソルとアヤはこの先長いのかぁとがっかりした。
「おまちどおさん、水たっぷり汲んで来たぜ」
ジンガが帰ってきてかまどにポットを置く。
 火が激しかったからかお湯はすぐに沸いた。ソルが温かいお茶を入れてみんなに渡す(アヤに渡す時に手が触れて彼はまた顔を赤らめた)。
「お茶を飲んだら、出発するかい?それともここで少しゆっくりするかい?」
ギブソンがそういう。彼自身後者であってほしいのか若干声で後者のほうを推す。
「僕も疲れてしまいました。とはいっても寝具もないので寝れないのですが」
「そうよねぇ……あたしとしてはベッドで寝たいのだけれど」
スウォンが言うとミモザが不平を垂らす。が、意外にも疲れているはずのソルが対照的な意見を口にする。
「ここで休むとしてもロクに休めないだろうし、先を急いだほうがいいとおもうが」
「そうですね、食料もないですし、早く任務を終わらせて帰りたいものです」
一番疲れているはずの二人の意見だったので彼らはしかたないなぁとしぶしぶだが承諾する。

 休憩場所から出発した一行は間もなく山道へと差し掛かる。急こう配ではないものの道が狭く足場が危険な状態なところも少なくはない。
「わっ!」
「っ!」
「危ない……」
ソルはこういう山道になれていない。今も躓いてもう少しで谷底にまっしぐらだった。
「もう、ソルさん!もうすこし慎重に歩いてください!じゃないと命がいくつあっても足りませんよ!」
アヤに忠告され、彼はしょげる。
「ソルさんいなくなったら貴方のことが好きな私はどうすればいいんですか……」
ソルがあまりにへこんでいるのでアヤがソルにそういう。彼はそれを耳にして今度は真っ赤になった。
「お兄さん、もしかして歩くの早いかなぁ?」
一連のやり取りを聞いてエルジンが最前列から声をかける。同じ召喚師だが彼は運動神経がいいのか、はたまた慣れているからなのか全く危なげない様子で先頭を切っている。できるだけ危なくないところを選び、時に山を削りながら、時に足場を強化しながら進んでいる。
「エルジンくん、ソルさんが少しおぼつかないようなのですこしペースを落としてくれるとうれしいかな」
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