それからの日々

□それぞれのクリスマス
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夕方になってソルが起きてきた。
「ん、いい匂いがするけど、これはシチューか?」
ソルが匂いをクンクンしながらアヤに尋ねる。アヤは笑顔で正解ですと答えた。
「ご飯はもうできてますよ、時間的にもいい時間ですしそろそろご飯にしませんか?」
アヤが彼に向かってそう言う。
「いいんじゃないか?明日のこともあるし早めに食べて早めに寝てもいいと思うぜ」
ソルが賛成したので彼女は早速配膳を始める。彼はそんな彼女を手伝い始めた。彼は七面鳥を温めなおすため保存場所から取り出す。
「しっかし、豪勢だな。くりすますでぃなーってのはこんなでっかい鳥を食べないとダメなのか?」
ソルは温めるようにしながら言う。アヤは配膳を終えてテーブルへと持っていきながら答える。
「そんなことないですよ、人によったらパスタ食べる人もいますし、チキンを食べる家庭だってありますよ。それに多分焼肉や、焼き鳥の人もいると思いますよ……」
アヤはなぜか尻すぼみで答えた。ソルはふぅんと言いながら温め終わった七面鳥とナイフを持ってテーブルへと着席する。
「ケーキもあるし、食べ始めようぜ」
ソルが軽く促す。
「いただきます」 「いただきます」
彼らは同時にそういって食べ始めた。ソルは器用に七面鳥を切り分けている。
「ほら、アヤ皿を貸せよ」
ソルは軽く切り分けてアヤにそういう。言われた彼女のほうもすっとお皿を差し出した。ソルはそこへ切り分けた七面鳥のうち一つを載せる。それをアヤに返してから彼は自分の分を取った。
「うん、シチューもうまいぜ」
ソルは一口食べてそう言った。が、アヤは自分では満足できないのか少し曇った表情で言った。
「でも、ソルさんが作ったシチューと比べるとどうしても味が劣ります。くやしいなぁ……」
アヤは心底悔しがる。ソルはでも、うまいんだから気にするなと言葉をかけた。
「しかし、七面鳥って食べごたえがあるな。こんなでっかい鳥二人で食べられるのか?」
ソルが素直な感想と疑問を口にする。
「ソルさんがたくさん食べれば何とかなると思いますよ。期待してますからね、ソルさん」
アヤは期待を込めた目で彼を見る。彼は困ったように目をそらした。
 結局アヤと彼で何とか食べきった。いささか以上に互いに満腹になってしまったが。
「ケーキは少し時間をおいてからにしよう、でないと食べられないからな」
ソルのその一言にアヤも同意してどうせならご飯の後片付けはしてしまいましょうと皿洗いを始めた。
 1時間後。片づけも終わり少しくつろいでいたアヤがコーヒーを淹れながら彼に向かって口を開く。
「そろそろ、ケーキを出してきて切って食べましょうか」
ソルも程よくお腹がこなれていたのであぁと返事をした。彼女がケーキを冷蔵庫から持ってきた。切ってくれと彼女はナイフを差し出してくる。彼はしぶしぶとナイフを取りながらぼやく。
「ったく、失敗しても文句は言うなよ?」
えぇと彼女は目の前で微笑んでくる。彼はその期待の込められた微笑みを見てナイフを入れた。

「きれいに切れましたね。さすがソルさんです」
「いやぁ、まぐれだと思うぜ?」
アヤは数十秒後きれいにカットされたデコレーションケーキを見て素直な感想を述べた。
「と、とりあえず食べてみようぜ?観賞用に作ったわけじゃないんだからさ」
ソルがこのままではいつまでも眺めかねないとアヤを促す。そして彼女にカットされたうちの八分の一を差し出す。そのあとすぐに自分にも同じ分だけ皿へと移す。
「では、いただきましょう」 「あぁ」
いつもとは少し違うながらもいただきますと言う意味で彼女は挨拶をし、早速目の前にあるそれを口へと運ぶ。ソルは固唾をのんでそれを見守る。口に入れて数刻、彼女の顔がぱっと明るくなる。
「ソルさん!大成功ですよ!おいしいです。スポンジもやわらかいし、クリームも甘すぎず、あっさりしすぎずでちょうどいい感じです」
アヤにそういわれソルも一口賞味する。
「なるほど。たしかに甘すぎない感じだな。みんなの好みでもう少し甘さを加えてみてもいいくらいではあるが」
「私はもう少し甘くてもいいですが、男性がくることも考えるとこの程度でもいいかもしれないですよ?」
「男って言ったってキール兄とハヤトなんだろ?あいつら甘いのはいけるはずだろ。むしろ女子のほうに合わせてもう少し甘さを加えてみてもいいと思うぜ?」
ソルはそう提案する。
「そのあたりは一緒にパーティに参加してくれている女子に訊いてみますね」
「あぁ、頼んだぜ」
アヤはそう会話している間に食べ終わったのか次の一切れに手を出した。
 結局ケーキはアヤが5ピース、ソルが3ピース食べることで姿を消した。
「じゃぁ、取り合えずお風呂に入ってこいよ。俺が後は片づけておくからよ」
ソルは食べ終わった後しばらくしてアヤにそう声をかけた。彼女は微笑んでそうさせていただきますねと言って浴槽にお湯を張りに行って、着替えをもって脱衣所へといった。
――さてと、明日も同じものを今日の三倍は焼くのだからさっさと片付けてさっさと寝るかな――
ソルはさっさと片付け始める。と言っても片づけるものはコーヒーを飲むために使ったマグとケーキが乗っていた皿だけなのだが。
 あっという間に片づけ終わって彼は一息つく。
 しばらくして、アヤが出てきた。彼女は彼に向かってお風呂どうぞと言ってきた。
「さきに、髪を乾かして寝てていいぞ、明日は今日よりももっと大変だからな」
彼はアヤを気遣ってそう言葉をかけてから着替えを取りに行き脱衣所へと向かう。
――風呂か……。お、今日は入浴剤が入れてある――
彼がお湯を見ると乳白色へとお湯の色が変化している。
――クリームローズか何かの入浴剤か……?――
彼はお湯につかりながらそう分析する。乳白色のため自分の手や足は全く見えない。首元がやっと見えるかというところだ。
――やっぱ、冬場のお風呂は極上の安らぎだよなァ……――
ソルはそう思い全身を弛緩させる。
 40分後ぐらいに彼はお風呂を出る。素早く着衣を済ませて彼はリビングへと行く。そこに当然彼女の姿はない。一人になったリビングで彼はドライヤーをかける。
――俺も、早く寝るか……――
 彼も髪が乾き次第、電気を消して寝た。

 翌朝。
彼はとりあえず午前8時30分に目を覚ました。キッチンへ行ってみるとそこにはアヤの姿があった。彼女は彼が起きてきたのを見て声をかける。
「おはようございます、ソルさん。朝ごはんにしましょうか。それから早速パーティ用のケーキを焼き始めましょう」
アヤはそう言ってたった今焼けたばかりのパンを食卓へ並べシチューをよそう。ソルはとりあえず食卓の彼の席へと着席した。彼女もすぐにやってきて彼女の席へと着く。
「いただきます」 「いただきまーす」
同時にそう言って彼らは食べ始める。アヤの焼いたパンは香ばしくていい香りがする。
「朝から、生地を練って焼いたのか?」
ソルはまさかと思い聞いてみる。アヤはにっこりとした。
「まさか、そんなわけないです。昨日ソルさんが入浴している間に生地をある程度作っておき、今朝その続きからやったというわけです」
なるほど……と彼は納得する。
「おいしいぜ、今日のパン」
彼は素直に感想を述べる。
「そ、そうですか?よかったです、作った甲斐がありました」
「さて、食事が終わったら早速ケーキを作り始めようか。アヤ、パーティは何時からどこで始まるんだ?」
ソルは今日の今日まで確認して無かったことを今ここで確認しておく。聞かれたアヤは手帳を見ながら答えた。
「ええと、場所は……ここから電車で35分ほどの友人の家です。駅から15分ほど歩くので1時間はゆとりを見て家を出ないと遅刻です。ちなみに開始時刻は14時ですね」
「ふむ、じゃぁ早く食べて早速はじめないと間に合わないな」
ソルはそう言って食べる速度を少し上げた。アヤはもう食べ終わったようである。
――って、アヤは食べ終わってるし!お、俺のせいなのか?――
彼は内心焦ってしまった。
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