帝都学園日記

□1年生春学期
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そうこう準備をしているうちにあっという間に残りの日々は過ぎていった。そして迎えた、
――入学式当日。
「とうとう、新入生の総代があいさつしますね……」
レックスが隣に座るアティにぼそぼそと話しかける。すでにアティ先生の方はハンカチを用意しなく準備万端である。レックスはそれを見ながら自分もハンカチを用意した。
アリーゼとウィルが登壇しマイクに向かって息を吸って、自身が書いた――結局全くテコ入れされなかった――文句を述べ始めた。
「木漏れ日の差し込む、春の陽気に誘われて鳥のさえずりが聞こえる季節となってまいりました。このようなよき日に伝統あるウルゴーラの軍学校へと入学できることを私たちは誇りに思います。この挨拶している今、私はとても緊張しています。ですが、この緊張がとても心地よくもあります。なぜなら、このような立派な先輩方に囲まれて学園生活を送ることができるからです。精一杯精進し、社会に役立つ人材になれるよう努力することを新入生代表として誓います!
 新入生代表アリーゼ・マルティーニ 
      ウィル・マルティーニ」
代わり交代で読み上げた挨拶は割とかっちりしていてそこそこのモノだった。
――これを自力で書くんだからやるよなぁ……――
レックスはしみじみとそう思いをはせた。アティは横で涙を流していた。

「さて、これから教室にクラスごとに入って自己紹介とかするんでしたっけ?」
ベルフラウは式場から学舎に帰りつつそうぼやいた。
 クラス編成は入学試験の試験結果を加味して習熟度別に割り振られているらしい。とはいっても彼ら四人は全員がSクラスであるけれども。
 Sクラスは学力、戦闘力、人物ともどもすぐれている人物が選ばれるクラスで、将来の特進クラスへの登竜門と言われている。
 ほかのクラスはというとAクラスが二つあり、片方は戦闘力難ありで学力が秀でている人物が集まっているいわゆる文科系のクラス。
 もう片方が座学に難ありで、戦闘力がある程度秀でているクラス。
 その下にBクラスCクラス……と続く。Bクラスは割合出来はいいもののいまいち特化という点ではAクラスに及ばなかった生徒がいる。とはいっても部分的にはAクラスをしのぐ生徒もいたりする。CクラスやDクラスは戦闘や座学において基礎から学ぶ必要があるとされた生徒が在籍するクラス。
 彼らは自教室である202教室へと入る。座席にすでにネームプレートが貼っており彼らはそれにしたがって席へと着く。

 しばらくして教師が来て案の定自己紹介をするようにと言われた。黒板に自己紹介する事項が書かれる。
「名前、年齢と……、あとはどの属性の召喚術が使えるかがわかっていれば。あと使っている武器とかがあればね」
教師はそう言って壇上から降りて戦闘の生徒に挨拶をするように促す。と言っても最初はアリーゼなのだが。
「は、初めまして……、アリーゼ・マルティーニと申します、年齢は12です。ええと……使っている属性は霊属性で護衛獣がいます。武器は杖のみつかっています……、ほかの武器にも挑戦してみたい気もするんですけど……。仲良くしてください!」
そう言うとアリーゼは自席へと戻る。
次がウィル。
「ウィル・マルティーニです」
アリーゼのときもだったが名乗った途端生徒の間でささやきが聞こえる。
「妹のアリーゼの二つ年上で今年15になります、得意属性は獣属性、護衛獣もいます。武器は杖がメインですが剣も使えます。たまに刀を用いる時もあります。よろしく」
ウィルはそう言うと自席へと戻った。
その次はベルフラウ。
「ベルフラウ・マルティーニ。私はことしで14。妹と兄とは違い鬼妖界シルターンの召喚術が合う感じかしら……、護衛獣はオニビがいます。武器は主に弓と銃で、えっと、まぁよろしく」
ベルフラウは可憐な動作で壇上から降りて自席に着く。
「ナップ・マルティーニ、11歳だっ、オレは機属性魔法が得意で護衛獣はアール。武器は斧と剣と大剣かな……。よろしくなっ!」
ナップは無邪気に笑って壇上から降りて席へと戻った。
 結局自己紹介が終わるころには1限の時間は終わっていた。

「おい、お前ら」
休み時間に集まって談笑していたマルティーニ兄弟(姉妹)はその一声にふっと振り返った。振り返って見えたのはいかにもおとなしそうな2人組。先の声を出した人とは思えない。
「あ、ごめんなさい、すごんじゃって。僕、人見知りで、反応してもらえるか怖くて……」
「そんなに、怯えなくても……。で、どうかした?」
ウィルは昔の自分をほうふつとさせるその姿にすこし感じるものがあったのか話の続きを促す。
「自己紹介のときマルティーニって名乗ったよね……?あのマルティーニ家なの……?」
「確かマルティーニ家って帝国でも最も名の知れた豪商だったと思うんだけど……」
もう一人の少年が口を開く。
「それ、私も思ってた……。でも、まさかって思って……」
気づけば別の少女も顔をのぞかせている。
「う〜ん、あのって言われてもどの?って聞かざるを得ないけど、確かに父さんは商人だけど……」
「屋敷にはまぁ使用人はいましたけど……」
ベルフラウがウィルに続いてそう言う。
「……ってことはやっぱりあのマルティーニ家なんだ……」
集まってきていた4〜5人はしきりにうなずく。
「もう一回さ、よかったら自己紹介しようぜ?オレさ物覚え怪しいし、もっとみんなのこと知って仲良くしたいし!」
ナップが人懐っこい笑みでそう言うと彼自身がまずと、自己紹介を始める。
「ナップ、オレの趣味は外で遊ぶことだ、んで、実は室内で読書とかは苦手……」
「ナップの一つ上の姉のアリーゼです、ナップと違って読書好きです。でも、外で遊ぶのが嫌いというわけでもないです、趣味は創作活動かな……」
「その一つ上の姉のベルフラウ、趣味は最近は銃の勉強かしら?ソノラのトリガーハッピーと火薬マニアがうつったのかしら……」
「長子のウィルです。たまに剣の稽古をするのが好きかな。でも、召喚術の勉強も好きだよ」
マルティーニ姉弟が挨拶を終える。
「ええと私は、ネシュミア・ドレイストです。趣味は……歌です……」
「ボクの名前はジェスジール・フェッツロイ。趣味は……散歩と昼寝かな……」
「ウェンリスト・セウェルスです。絵を描くことが好きです、よろしく」
「えっと、ジェルスリー・ルースブルグです。名前がややこしくてごめんなさいってことで覚えてね☆」
一応自己紹介が終わったところでマルティーニ姉弟も固まっているのじゃなくて間に入って割と打ち解けることができた。
――2限。
「では、今日は日課表を渡します。これが1年生の日課表です」
「起床時間もだいたい規定されてるんだね……」
2限は仲良くなるという意味で割とどこにいても先生の話さえ聞いていればよかったのでさっき打ち解けたメンバーで固まって話を聞いていた。
「部屋割りも今渡すので名前を呼んだら取りに来てください」
教師がそう言うと順に生徒が部屋割りを受け取りに行く。
「あ、ジェスジールの部屋の隣だ……」
ナップが部屋の番号を確認してぽつりと漏らした。
「僕はウェンリストの隣だね」
そうこうしているうちに2限は終わり今日の授業は終わりとなった。

「ふぅ、とりあえず、寄宿舎に帰る?それとも少しゆっくりしていく?」
ウィルがみんなの意見を聞くべく口を開く。結果、少しゆっくりしていくことになった。
 突如、ドアがバタンと空いた。
「な、なに!?」
「私見てきます」
ネシュミアが見に行こうとするので、アリーゼが素早く制す。
「ダメ!危ないかも……私が行くからここで待ってて……」
「じゃぁアリ姉、オレも行くぜ。前衛はいたって困らないだろ?」
「じゃぁお願い」
彼らが戸口に近づいた途端、突如ナイフを持った仮面の男が現れた。彼らはそれを見た瞬間叫ぶ。
「全員、戦闘用意!」
アリーゼの張り上げた声によって一斉に武装できる生徒は武装をした。と言ってもウィルとベルフラウ以外の4人はまだ実践のイロハもないのでただ、武器を持っているだけにすぎないのだが。
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