短編用

□臆病者
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放課後の静かな教室―
一番後ろの窓側の席…誰も居ない、だからここに居る
そして外を眺める
一人の空間、寂しい空間……

普段なら避ける空間も、今の自分には心地よい


―ガラッ


「……。」


それなのに奴はまたぶち壊す


「あれ?いたの?」


嘘、私が居たこと知ってた癖に


「何してるの?考え事?」


「……。」


「はぁ…最近つれないよね」


答えずにいると溜息を吐きながら前の席に腰掛け、私と向かい合うように座るコイツ


「悩み事なら聞くよ」


「……。」


「勉強?友達のこと?」


「……。」


「それとも……恋愛?」


「ほっといて…っ!!」


思わず出した言葉に目の前にいる男子、折原臨也はニヤッとした

…しまった
コイツにとって“こういう言葉は肯定となってしまう”
だが、時すでに遅し…この時、私は自分の失言に酷く後悔した


「恋、してるんだ?」


「違う」


「速い否定は肯定」


……コイツの場合、無言でも肯定と捉える
そもそもコイツに嘘など全くの無意味だ。

コイツは…嘘ばっかりなのに……


「ついにナマエも恋をする気になったか…ね、相手は誰なのさ」


全部、何もかも知ってるくせに…
コイツは本当に……


「タチが悪い」


「なに?急に酷いな〜傷ついたよ」


「嘘つき」


「どっちが」


その言葉に目を見開く


「嘘なんか、ついてない」


「ふーん」


あぁ、泣きそう


そんな自分を悟られたくなくて
でも、コイツに悟られない方法がわからなくて
私はただ、机にうつ伏せた


「具合が悪いの…「臨也は」…ん?」


「臨也はどうなの?」


「何が?」


「あの子と…」


「あの子?あぁ、君の友達…そうだね」


臨也はあの子のもの
そしてあの子は私の友人

だから私はなにもできない


「彼女ね」


「……。」


「別れたよ」


「え…」


思わず顔を上げる


「あ、顔あげた」


ぶつかる視線


「嘘ッ」


「嘘じゃない」


「だって…あんなに」


「あんなに…何?」


「…っ!」


冷たい、冷たい笑顔


「ナマエはさ、俺たちの何を知ってるの?いつだって俺たちが一緒にいるときは目を背けて、避けて…合わないようにして」


確かに…その通りだった


.
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