短編用

□会い、哀、愛。
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「………」


「おはよう臨也」


朝、人間観察のために出かけようとした臨也の前には昨日の女が立っていた

臨也が歩きだすと彼女もあとを追い掛けてきた


「君さ…本当になんなの?」


臨也は半ば呆れ顔だった


「臨也…私のこと覚えてない?」


「全く記憶にないけど?」


「ナマエ…」


「は?」


「私の名前」


「あっそ。」


彼女の顔も見ずに素っ気ない返事をした

顔はみてないが彼女が落ち込んでるのは何となく分かった


「もう私がいなくなって3年くらいたつもんね…」


「へぇ、君って留学生かなんかなの?」


「本当に覚えてないんだ。何か面白いことでもあったの?」


「あぁ…たくさんあったね」


最近あった出来事を思いだし、臨也はニヤリと口角をあげた


「そっか…なら忘れちゃうかな…臨也は面白い事が見つかったら興味ない事は記憶からすぐ消しちゃうしね」


「よく知ってるね」


ピタリと、彼女の足が止まった様な気がした


「どうかした?」


ちょっとだけ、ほんのちょっとだけだか気になった


「私、これから毎日臨也に会いにいくから」


「は?」


ストーカー発言?
臨也は顔をしかめた


「臨也がちゃんと…ちゃんと私のことを思い出してくれるまで……私、臨也に会いに来るから」


それだけ言うと彼女は走り去っていった


「はぁ…毎日来るとか」


憂鬱。


でも思ったほど憂鬱に感じなかった…何故だろう


「まぁ、いっか」


その正体も気にせず臨也は再び歩きだした


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「おはよう!」


「調子はどう?」


「お菓子作ってきたんだけど」


言葉通り。彼女は毎日臨也のもとへ足を運んだ


「今日は臨也に聞いてほしいことがあってね」


今日は昨日見た夢について話している。俺が出てきたらしい

雨の中、傘を持って並ぶ2人
毎日ホント…よく飽きないよなぁ


楽しそうに笑う彼女
鬱陶しい…でも嫌じゃない

とてつもない違和感が臨也を襲う


俺は何か凄く大事なことを忘れているのではないか


きっとそれはナマエに関することだった


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