短編用
□もっと聴かせて
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「……なんでそんなに俺の声が聴きたいわけ?」
「……!!?…臨也さん」
扉を開けると泣き出しそうな彼女の顔が目に入った
「……なんて顔してんの?」
「す、すいません!臨也さんの声……もう聴けないかと思うと悲しくなって」
「本当にわけわかんない…で、なんで俺の声が聴きたいのか教えてくんない?」
すると彼女は少し俯き『助けてもらったから』と呟いた
「………は?」
「だから助けてもらったんです!臨也さんの声に……臨也さん覚えてないかもしれませんが………昔、友達に紹介されて臨也さんに電話で相談したんです……臨也さんの声、凄く私の支えになって……」
全然記憶になかった
そんな相談なんて今まで数えきれないほどしてきた
「えっと…私って声フェチなんです……だから……その臨也さんの声…すっごくタイプで…素敵な人だなぁ〜って」
「俺の顔とかスタイルとか…そんなんで好きになったわけじゃないわけ?」
「へ?」
俺の言葉にポカンとする彼女…
次に彼女は衝撃の一言を発した
「…私………臨也さんの姿、今日初めてみました」
「はぁ?!」
そんなのあり得るわけないだろ?
だが…よくよく考えてみれば、俺はいつもインターホン越しで彼女をあしらっていた為、直接彼女に会ったことはなかった
「俺の住所…誰にきいたの?」
「その…臨也さんを紹介してくれた友達です」
成る程…彼女の友達はそれなりのお得意さんだったわけだ…
「…で、感想は?」
「はい?」
「俺をみての感想」
「…えっと…かっこいいです。想像通りで………でも、やっぱり……一番素敵なのは声ですね」
“一番が声”
そんなこと言う人って初めてだな
実際話してみるとさっきまでの強引な面影は全くなく、どこにでも居そうな普通の女だった
面白い……
臨也の脳裏にその言葉が思い浮かんだ
「じゃあ私は帰ります。もう来ませんから……最後に臨也さんとお話できて嬉しかったです…では」
「ちょっと待って」
俺に背を向け去ろうとした彼女を俺は呼び止めた
「何ですか…?」
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