愛したい、愛されたい。

□触れられない
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暗い…真っ暗、何もない
そんな場所に少女は一人立っていた


「ここはどこ?」


少女の声が響く
それ以外には暗闇しかない


ー懐かしいね


頭の中に少女にとって聞き覚えのある声が聞こえた


「懐かしい?こんな場所を私はしらない…だいたい、ここはただ真っ暗なだけでに何もないじゃない」


ー本当に?よく見てよ


そう言われ、少女は目を凝らした
暗闇に慣れたのか…よく見るとここは地下監獄のような場所で、少女はある牢の前に立っていた


「ここは監獄?」


ー確かに監獄のようだけど…少し違うね。ほら、その牢の中……ボクたちにとっては、とても見覚えがあるものでしょ?


そう言われ、少女は牢の中を確認する
その中には敷かれたボロボロのござのようなものと小さなお盆と食器が置かれていた


「やっぱり監獄じゃないの?」


頭の中の誰かに問いかけた時だ


コツ、コツ、コツ…


奥の方からなにやら足音が聞こえてきた
少女が音のする方に目をやると、灯りがユラユラと揺れながらこちらに向かってきているのが見えた


「人?」


やってきたのは30代後半くらいのガタイのいい男だった
男は少女に目向きもせず、牢の鍵を開け始めた


「もしかしてこの人、私が見えてないの?」


ーそうだよ。だってここはキミの記憶の中…うちはイタチによって見せられている幻術なんだから


「幻術ならあなたが解いてくれたらいいじゃない。わざわざ見ることもない」


ーボクだって、幻術を解こうとしたさ。でも、彼の術はなかなか強力で…一筋縄じゃいかないんだよ。それに…


「それに?」


ーボクも、彼と同じことを言うつもりはないんだけど…キミはもう一度自分の過去と向き合うべきだと思う。


「なんで…」


ーキミが傷つかないために。


そこまで言ったところで、少女の頭の中から声は消えた
次に聞こえてきたのは、先ほどの男の声であった


「さぁ!早く出るんだ!!」


男はそう言いながら何かを牢屋から引きずり出してきた

引きずり出されたのは齢3〜4歳程の幼い子供だった


「……」


「なんだその目はっ!!」


その子供は光のない瞳で男を見た
その瞬間、男は手を振り上げ子供の頬を叩いた


「っ!!」


子供は地面へと倒れこみ、男はその子供の襟を掴み上げ、引きずりながら外へとつながる階段を登って行った


「……」


ー思い出せた?


男たちが去った後、少女の頭に再び声が響き始めた


「うん。忘れるわけない…」


ーそうだね


「だってアレは



































私だもの」


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