Short Story
□The heart never lies
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静かに流れていた二人の時間は、携帯の着信音で途切れてしまった。
「携帯、鳴ってる。」
「…うん」
携帯を見た彼女の表情でメールの贈り主が分かった。
「私、行かなきゃ…」
僕は黙って頷き、帰り支度をする彼女を見ていた。
本当は、行ってほしくなんかない。
彼女には、生まれる前から決められた婚約者がいる。
抗えない運命なのだ、
と彼女は言っていた。
愛していない人と結婚なんて幸せになれるわけがない。
それなのに…
僕は弱い人間だ。
彼女は知らないが
婚約者は僕の親友だ。
友情が壊れるのが怖くて
彼女を奪うことができない。
あいつより彼女を愛しているのに…
痛む胸を抑え、彼女が部屋を出るのを見送った。
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