Short Story

□The heart never lies
1ページ/12ページ



静かに流れていた二人の時間は、携帯の着信音で途切れてしまった。


「携帯、鳴ってる。」

「…うん」

携帯を見た彼女の表情でメールの贈り主が分かった。


「私、行かなきゃ…」

僕は黙って頷き、帰り支度をする彼女を見ていた。




本当は、行ってほしくなんかない。


彼女には、生まれる前から決められた婚約者がいる。

抗えない運命なのだ、
と彼女は言っていた。


愛していない人と結婚なんて幸せになれるわけがない。

それなのに…
僕は弱い人間だ。



彼女は知らないが
婚約者は僕の親友だ。

友情が壊れるのが怖くて
彼女を奪うことができない。

あいつより彼女を愛しているのに…




痛む胸を抑え、彼女が部屋を出るのを見送った。





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ