ミルモでポン!長編

□頑張れや
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不運な男、ヤシチ。
ちょっと離れたところで笑い転げるミルモがいるのを彼は知らない。


ヤシチはカラスの方に首を向けた。
ヤマネも心配そうにヤシチからカラスへ視線を移動させた。

マトにはまだ手裏剣がないのを確認する


「…どうした?まだ投げないのか?」

ヤシチの目を合わせようとしないカラスが、ポツリと

「もう投げたよ……」

そう返した。


「あ、あにさま……」

ヤマネの声に、ヤシチは振り返る。
ヤマネがマトの方を指しているのでよく見てみると


マトの周りに手裏剣が三枚あちこちに落ちていた。


「……へ?」

思わず間抜けな声を出すが、間が抜けないワケがない。

「……フンッ!」

苦しそうなカラスが腕組みをしてそっぽを向く

「……お主まさか……全部…その、外したのか……?」

「…そういう考え方もあるな」

他にどういう考え方がある?

カラスのその言葉を聞き、ヤマネは勝敗を決めた

「ヤシチあにさまの勝ちでございます!」


「仕方ねぇ。今日のとこは負けを認めてやる……
でも!次は負けねぇかんな!
絶対オマエに勝ってやる!
バーカ、バーカ!」

カラスが興奮気味にそう言い、後方へ向きを変え

「じゃあな、ヤマネ!」

「あ、はい。お疲れ様でした」

ヤマネの別れを聞くと、カラスは走り去っていった。


「また来いよー」

ヤシチが脱力しながら手を振る

あの気合いの入り用は何なのだろう。

「なんか変わった奴だな」

「でもいい方なのでございます」

和やかに笑いあう一方、桃たちは

「これは骨が折れそうね。
でも諦めないわよ!私たち三人で頑張りましょ!」

桃は燃え上がり、楓たちは燃え尽きていた。燃えてすらいないのに。


休日を無駄にした楓たちはもう手は貸さないと決心だけはした。






「うふふっ お疲れ様」

自宅にて今日の頑張りをカラスはカモメに報告した。

「うん。疲れた……」

「ヤシチくんがいくら『ダメにんじゃ』だからって、あなた程度が勝てる相手じゃないわ
もっと頑張んなさい」

そう言ってカモメはカップ麺をすする



 
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