KND短編

□空に包まれて、きみに
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アタシと彼が初めて会ったのは…………
いや、いつだったかは覚えてない。

小学校でも会っていたような気がするけど、
思い出すことが出来ない

ホーギー・P・ギリガン・Jr

彼とは、中学でたまたま同じクラスになって仲良くなり、よく話していた
中2に上がる頃、告白された

実際、アタシも彼のことを想っていたからすごく嬉しかった。
……嬉しかった、が


告白の台詞が……

「きみと会える学校は嬉しくて楽しくて、
スキップしちゃうんだ!
きみのことがスキなんだ!」

ねぇよ。

ロマンの欠片もありゃしないジョーク野郎をを、殴りとばしてから
自分も好きだと伝えた。


意外だった。
中学、高校卒業後もアタシたちは付き合い続けていた。

でも、やることはいつもといっしょ。

お互いの家に行き来して、
テレビ見たり、お菓子食べたり、ゲームしたり……
恋人らしいことは、この数年間でひとつもしていなかった


そんなある日。
アタシは自室でぼんやりしてると、ホーギーが窓をコンコンとたたいた
……玄関から入ればいいのに

アタシは窓を開けた

そこには、飛行帽を被ったホーギーの姿

「ねぇ、空行こうよ」
 
 
手作りの空飛ぶ乗り物。
プロペラがついてて、ヘリコプターと飛行機がぐちゃぐちゃに合体したような、ヘンテコな乗り物。

「ほんとに飛ぶの?
……墜ちたりしない?」

思わずアタシは不安を隠せずに言った
でもホーギーは
「平気さ」
とだけ言った。

ゴーグルの奥に見える、ちょっと強気そうな彼の瞳は、
かつて「空の王者だった」ことを告げてるように見えた……
……気のせいかな?


「しっかりつかまってて」

乗り込んだ直後に言われた。
掴まるとこないじゃん。

すると、アタシが思ってることを察したのか
ホーギーはアタシの両手をその身にまきつけた

「……!」

「僕に掴まってて」


反則だ


 
 
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