ミルモでポン!短編
□弟たちの愚痴話
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空の日が沈んでいく妖精界。
カラスは、買い物袋を提げて自宅へ向かう。
そして、ぼんやりと姉のことを考えていた。
カラスの姉・カモメは、周りからは「大人」だとか「穏やか」に見えるらしいが、
それは間違いではないが間違いである。
カモメは家では何もしない(しようとはしない)タダのぐうたらなのだ。
にわかには信じてもらえないだろう。
だが、弟であるカラスがこうして家事をこなしているのが現状だ。
そんなことを考えていたら、自分なにやってんだろうと急に憂鬱になってきた。
思わずため息を漏らす。
「ハァ……」 「ハァ……」
……何やらため息がもうひとつ聞こえた。
見回してみると、程よい大きさの岩に腰かける妖精と目が合った。
「……ほぇ?」
ふわふわしたピンク色の髪に、揺れる触角。
ムルモはぱちぱちと瞬きをした。
「じゃあ、ええと……名前…」
「カラスだ」
「カラスしゃんにも、上のキョウダイがいるんでしゅね?」
ムルモの隣に腰かけているカラスは、まあな。と短く言った。
「ムルモも悩まされてるみたいだな」
「ほぇ、なんでボクの名前知ってるんでしゅか?」
「有名だしな」
同じ学校の同じ学年で知らない者はいないであろう。
『みんなのアイドル☆ムルモちゃん』を。
あとはこの世界を『だあく』だか何かから守った、伝説の4人のうちの1人としても名高い。
カラスは、更にそのうちの赤い忍者を思い出し、少し不機嫌になった
「ごめんでしゅ。
サインは女性にしかしないんで」
「いらねーよ」
ツッコむと、ムルモが話を戻す
「今日、お兄たまが
ボクの『限定販売!とろけるチョコマシュマ〜ロ☆』を勝手に食べてしまったんでしゅ……」
「そりゃひでぇ」
「わざわざ並んで、なんとか買えたんでしゅ!
ちょっと目をはなした隙に、全部食べやがって本当に腹立つでしゅ!!
チョコのことしか頭になくてワガママだし
しかもこれがまたブッサイクなお兄たまで、ボクと血が繋がってると思うと恥ずかしいでしゅ!!」
喋りだしたら止まらない。
ムルモは胸にためていた物をどんどん吐き出していく。
後半関係ない。
「触角ビームかまして、勢いで妖精界まで来ちゃったのでしゅ」
「オマエも苦労してんだなぁ……」
カラスがちょっとマイペースに言うと、買い物袋を漁る。