頂き物
□いつかきっと、届くから
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いっその事、読心術でも会得してくれれば良いのに。
アイツにその技があれば、俺が抱いているこの感情も読み取ってもらえるのに。
カラスは溜め息を溢し、塀の陰から顔を出した。
カラスの視線の先にいるのは、黄色い忍装束を来た妖精、ヤマネ。自身のパートナーと楽しげに会話する笑顔に、カラスの心が仄かに暖まる。
あの笑顔が自分に向けられたら……。
ぼぅ、と頭の中で何かが破裂し、顔に体温が集まる。
「カラスじゃねぇか。こんな所で何やってるんだぜ?」
背後から聞こえた声に驚き、勢いよく振り向くと、妖精学校のクラスメート、サスケとハンゾーの二人がいた。
「あれ、カラス、顔が真っ赤なのらー」
「なっ!」
「本当だ。どうしたんだぜ?」
「え、あ、いや」
「風邪でもひいたのら?」
二人が心配そうに眉を寄せる。それから目を反らしつつ、カラスは「そんなんじゃねぇよ」とぶっきらぼうに答えた。
「そっか、なら良かったんだぜ」
「なのらー」
つっけんどんなカラスの態度も気にすることなく、二人はへらりと笑った。
こういうバカっぽい素直さが自分にもあれば、少しはアイツとの関係も進展するのだろうか。
「あ、あそこにヤマネがいるのら」
少し先にいるヤマネ達の姿を見付け、ハンゾーが声を上げた。
顔の熱はもう引いた。"ヤマネ"という想い人の名を聞いても感情を顔に出したりしないのは、己が忍者であるが故だ。決して意地を張っている訳ではない。絶対に違う。
そう心中で言い訳をしても、心臓が大きく跳ねるのだけは、カラス自身にも止められないのだが。
ハンゾーが「ヤマネー」と声を掛けながら飛んでいく後ろ姿を、カラスは羨むように見詰めた。
何故自分には、ああやって飛んで行く事が出来ないのだろう。
もっと近付きたいのに。
もっと話したいのに。
もっと笑顔が見たいのに。
もっと、もっと……。
「カラスは行かないんだぜ?」
はっとして振り向くと、サスケがうちわを構えていた。すぐにでも飛び立てる体勢で、なかなかうちわを出さないカラスを不思議そうに見詰めている。