ミルモでポン!長編

□突撃!梅園邸
1ページ/4ページ



妖精の生き方には個人差が激しい。
お気楽な妖精はパートナーの対応をマイペースだし
真面目な妖精はパートナーのお手伝いを一生懸命する。


「またカオルおにいちゃまに逃げられた!」

ヤマネのパートナーの桃は、夕日を背に受けながら歩いていた。

「申し訳ありません!私が未熟なばかりに…!」


ヤマネは真面目だ。だからパートナーの望みを少しでも実現させようと励む。
しかし、それでも失敗ばかりのようで。


「ちがうちがう、そんなんじゃないのよ。
ヤマネはなんにも悪くないわ!
問題はあの楓おねえちゃまよ!いい年してカオルおにいちゃまを誘惑して―――」


また始まった。

桃の楓への嫉妬による愚痴大会。
一目も気にせず喋りまくる桃にももう慣れた。
ヤマネはこの間、今日の反省を始める。


お気楽な妖精はとことんお気楽だし、
真面目な妖精はとことん真面目だ。

内気な妖精はとことん内気。


「……っ」

カラスは、ストーカーと化していた。

桃と桃の頭の上に乗るヤマネを、少し離れたところから尾行。

時節ヤマネが振り返ったが、無駄な反射神経で物陰に隠れてやり過ごしていた。



姉のカモメと約束した。
ちゃんとヤマネと話すと。

約束したはいいが、いざとなると勇気が出ない


「(あとほんの少しの勇気があればな……)」


などと自分の中で言い訳を始めるが、
勇気というのは最初からある物ではなくて、自分でつくるものである。
さっきつくることの出来た勇気は、一体どこへ消えたのだろう。



そうこうしてるうちに、桃の屋敷に着いた。
屋敷は警備が厳重で、まるで悲恋の物語・ロミモとジュリモを思い出したが、
妖精であるカラスには、人間の警備などお子様用ゲームの第一ステージと何ら変わりないのだ。

そっとヤマネたちのいる部屋を窓から覗く。

「(こんなとこで暮らしてるのか……)」

窓一枚挟んだ向こう側で、ヤマネと桃が談笑している。



「(……行くぞ)」

自分はロミモなんかじゃない。
カラスはグ、と拳を握り直す。
窓ガラスに自分の姿がうっすら映っている。
そこには、怖い顔をしたカラスが立っていた。

笑顔の練習しておけば良かったと後悔するが、そんなのもう遅い。

カラスは勇気の大量生産を行った







「何故ここに?」

ポツリ。

ヤマネに言われ、カラスは固まった


窓を開け、入室して、窓を閉じて、ヤマネに近づき、挨拶をしたまでは順調だった。
順調と思い込んでいた。


考えてみれば、話す内容も、ここにいる言い訳すらも準備してなかった。

後悔の嵐にぐるぐる回されるカラスを見て、桃はくすりと笑う


 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ