ミルモでポン!長編

□プルメリアに気づいた日
2ページ/4ページ




悔しかった。

負けが確定してる自分に。
こんな奴に、ヤマネもやられたのか。


顔を上げ、短刀を持ち直した


「お望み通り、倒してやるよ」


――――――――――――――


『刀は長いやつがいい!背中に背負うやつ!』

まだカラスが短刀を所持していない頃。

手裏剣もクナイも上手く扱えず、見兼ねたネズミが木刀を持たせてくれた。

まだまだ半人前以下だが、筋は悪くないようなので、試しに刀を一刀買ってみるということになり、心得を小一時間聴かされてから店まで見にきた

『長刀は間合いがとれるが、お主みたいにブンブン振り回してたら隙が大きすぎるでござる』

カラスは、ネズミに憧れている。
だからイヤミ混じりの論破も嬉しく思ってしまう

そんな中、目に留まったのは短刀

『ネズミさん、これなに?』

ネズミの代わりに答えたのは、刀たちを座敷に広げた主だった

『そいつは短刀だよ』

『これも短刀でござるか?一般的な物より随分と短いでござるな』

小型ナイフと同じくらいだろうか
ネズミは眉を寄せた

『俺が入手した頃既に無銘だったが、きっとかなり若輩者が造ったに違いねぇ。
こんな短くちゃ、戦いの役に立つわけねぇからな』

『まったくでござる』


戦いの役に立たない、若輩者の短すぎる刀。
一緒だと思った。

何故、その短刀を二刀とも購入したのかはカラスにも分からない。

“使えない”ので格安だったため、購入は簡単だった。

磨げば輝く銀になった。



――――――――――――――


右で斜めに斬りつけ、左で横に斬る。戻していた右を突きだす。

それが初めて当てた攻撃だった
にも関わらず、カラスは変わらず不機嫌だった

「何で避けなかった?」

蝶なら避けれた。避けられてた。
自分から当たりにいくようなその行動が理解できない

蝶は笑う

「キミはハエ叩きで潰したハエに、何故潰されたのか聞くのかい?
ハエだって好きで潰されたわけじゃない
キミが潰したんじゃないか」

「意味わかんねーよ」

「なら、潰される側になれば分かるかな?」
 

その言葉にハッとし、距離をとろうと後ろへ跳ぶ
なのに素早い蝶は一気に目の前と距離を詰められる

重い拳が体にのめり込んだ

「―――!」

吹っ飛び、砂埃まみれになるカラスに追撃。

カラスは数年生きてきてこんなに痛い思いをするのは当然初めてで、動けないでいた


「“ハズレ”かな」

蝶が退屈そうに欠伸をしてから、言った

「もういいや。終わらせよっか」

空高く跳び、ゆっくりとした体の回転が徐々に速くなっていく。
破転弾の体勢を見て、カラスは更に来る痛みを覚悟して目をつむった

「やめろだぜ!」

「やめるのら!」

遠くの車の音も、風の音も遮断されたみたいに、凛とした声だけがカラスに響いた

目を開ければ、「ただのクラスメイト」のサスケとハンゾーの背中が視界を覆っていた。


 
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ