ミルモでポン!長編

□いってらっしゃい!
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妖精…カモメは、こちらに気づくと駆け寄ってくる


ネズミはゲッと小さく漏らし、眉間にシワを寄せて立ち止まった。

「あ、あいつ何でここに…」

「お主を待っていたのではないか?」

ネズミとは対に穏やかな表情のヤシチが、珍しく核心をついて言った。

ネズミの目の前まで来たカモメは、息も声も弾ませていた。

「よかった!もう行ってしまったのではと思ったのよ!」

「何か用でござるか?」

嫌そうに尋ねた。
カモメはふるふると首を横に振ると、また明るく笑った

「見送りっ」


「そうでござるか」

冷たく反応すると、スタスタと門を出た。

「いってらっしゃーい!」

最後まで冷たくしてきた人の後ろ姿に、大きく手を振る

ヤマネも兄の後ろ姿を眺め、見送りを済ませる。

またしばらくは帰って来ないだろう。



「奴が好きならば、ついていけばよかろう?」

純粋なのか、それともただの馬鹿なのか。ヤシチはそんな質問をした

「ネズミくんのやる事は村の外にあって、あたしのやる事は村の中にあるの
あたし1人いなくなってる間、病人やケガ人がたくさん出たらどうするの?」


こればかりはどうしようもない。
彼女には仕事があるのだ。


でもカモメは一点の曇りもない顔で振り向いた

「だから、待つの」


「……」
「……」

ヤシチもヤマネも恋愛には疎い。
二人は何故カモメが笑えるのか分からなかった。




待たせる方と待たされる方

つらいのはどちらか



どちらもつらくないのだ。


彼は皮肉にも「待たせる」なんて思っていないし、

彼女は「待たされる」と思ってはいないのだから。


彼女の「待つ」
彼の(本人はそんなこと思ってないが)「待ってもらっている」

それはやっぱりどちらもつらくない。


どちらも苦には思ってないのだから。




「さて!ネズミくんがもしケガをして帰って来ても、パッ!と完治させれるくらいに腕を磨かなくっちゃ!」










→完全片想い



 
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