short

□えす
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夜中、私は身体に違和感を感じて目を覚ました。
こんな時間にここへ入って来れるのはただ一人……いや、私に跨るこの男の二人だけ。

顔は愛しい彼そのものだけれど、纏う雰囲気とサイドテーブルに丁寧に置かれた眼鏡に私は溜め息を零した。




「砂月……。私、夜這いされて喜ぶ趣味はないんだけど。……というより、那月はどうしたの」

「別に問題ないだろ。お前は俺と那月を愛してくれるんだから」

「はいはい、そうね。言っておくけど、私は痛くされても嬉しくないから」




―私Sだし。




そう言ったら、砂月に鼻で笑われた。
余裕綽綽な態度が何かむかつく。




「なら丁度良い。俺もただ従順な女じゃつまらない」

「は?」

「少しくらい抵抗してもらわないとな。未琴、お前は俺がただのSだと思ってんのか?」

「何言って…………んぅ?!」




いきなりの噛み付くようなキス。
訳がわからないけど素直に従うのは癪だったので、唇をギュッと引き結んだ。
そうしたら目の前の男は、いやらしく笑いながら私の鼻を摘みやがった。




「ふぁっ……んっ」

「生憎俺はドSなんでね。未琴くらい気が強くなきゃ面白くねぇ」

「んあっ、ゃっ……あぁ」




那月の優しい口付けとは違う、呼吸ごとしゃぶるような強引なキス。
なのに私の身体を這う手は優しくて、慈しむような瞳は那月と同じで、頭がおかしくなりそう。
でもやっぱり砂月も那月なんだと実感する。

そう思ったら砂月が愛しくて堪らない。




「さ、つき……んっ」

「っは、なんだ?」

「好きっ」

「っ!…………未琴、明日仕事休みだよな」

「えっ、うん」

「なら遠慮はいらねぇか」




ぼそりと砂月が呟いたかと思ったら、さっきよりも激しいキスが降ってきた。







(嬉しそうだね、さっちゃん)(未琴が初めて俺に向かって好きだと言ってくれた)(え?)(本当の意味で俺を認めてくれた気がするんだ)(うん、良かったね)

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