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□おれいろきみいろ
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「で、結局どっちの色にするんだ?」
「うーん。せっかく翔くんが選んでくれたから、このピンクで!」
「りょーかい。じゃあ右手から貸して」
「はい。よろしくお願いします」
「おう!任せとけ」
差し出された右手を掴み、丁寧にマニキュアを塗る。
俺が筆を滑らせる度に、肌色の爪が鮮やかなピンクに染まる。
あ……なんかこれって、
「マニキュア塗るのって、俺色に染めてるみたいでちょっとした優越感だな」
「……?」
「わわっ!いっ今のなし!!」
本日二度目の失言。
幸い未琴は聞こえなかったみたいで良かっ……。
「私は翔くん色に染められるなら嬉しいけどなぁ」
「!!」
全く良くなかった。
ばっちり聞かれてるし……。
てか未琴のその発言もどうなんだよ。
俺だって男だぞ。
まあ、未琴の天然発言は今に始まったことじゃないけど。
俺は何とか冷静さを保って最後の一本を塗る。
ようやく完成した爪を見つめる未琴は、左手の薬指を見てこてんと首を傾げた。
「翔くん、これ……」
「俺とお揃い。嫌だったか?」
「ううん。嬉しい!ありがとう翔くん」
黒く染まった一本に、どれだけの想いを詰め込んだかは今は内緒にしておこう。
(やあ、レディ。綺麗なマニキュアをしているね)(うん!翔くん色に染めてもらったの)(おいっ、未琴!)(へえ……それは良かったね)