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□おれいろきみいろ
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俺と那月の部屋で自主練習をしていたとき、楽譜を指差す俺に未琴が声をあげた。




「あれ?翔くん、今日はマニキュア塗ってないの?」

「ん?……ああ。たまには落とさねぇと爪に悪いだろ?」

「そっか!うん、そうだよね」




そこまで考えてるなんて翔くんすごいね。なんて未琴が言うから、急に恥ずかしくなって俺は視線を落とす。
それでも爪を熱心に見つめる未琴が気になって、顔を隠すためにそっぽを向きながら口を開いた。




「……お前、じっと見過ぎ」

「え?……あっ、ごめんなさい!翔くんの爪、綺麗だなって思って」

「はっ?!んなことねぇよ!……むっむしろお前の方が綺麗だし」




あーもう!
どうして未琴はこうも素直に言葉が出て来るんだよ。
言われる身にもなってみろ、ちくしょー!

落ち着きを欠いた俺は、キョロキョロと視線を彷徨わせてふと棚に目を止めた。
そこに並ぶのはいつもの黒いマニキュアと可愛らしいピンクのマニキュア。
未琴に似合いそうだなって思って、気が付けばカゴに入れていた。
無意識って恐ぇ……。




「ねえねえ、翔くん!」

「ん?どうした」

「私にもさ、マニキュア塗ってくれない?」

「別にいいけど、どうしたんだ?急に」

「え、あの……しょ、翔くんとお揃いにしたくて」




うわ、なんだよこの可愛い生き物。
自分で言っておいて赤くなるとかズルイだろ。

とか思いつつも素直に嬉しいわけで、俺は二つ返事で席を立つとあの棚にマニキュアを取りに行った。




「黒でいいのか?……一応、ピンクもあるけど」

「わあっ!このピンク可愛いね」

「だろ?お前に似合いそうだから買ってき、た……わけじゃないからな!」

「うん。じゃあそういうことにしておくね」

「だーかーらー、違うっつてんだろ!」




自分の失言に赤くなる俺を見て嬉しそうに破顔する未琴。
ちくしょう、可愛いな。

照れ隠しに怒った俺も未琴の笑顔につられるように笑った。
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