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□打算的な王子様
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人気のない校舎裏。
放課後のこの時間、そいつは見かける度に違う女を連れてそこへ来る。
毎度のことながら、飽きもせずによく女を引っ掛けてくるものだと呆れる。
まあ、遊ばれているとわかっていながらついて行く女も女だと思うけど。




「あ、ごめん未琴ちゃん。ゴミ捨ててきてもらってもいい?黒板はオレが消しておくから」

「わかった、行って来るね。黒板よろしく」

「おう」




珍しく一緒になった日直。
それを知ったオレはわざと未琴ちゃんをゴミ捨てに向かわせた。
彼女が他の人とは違い、校舎裏を通ってそこへ行くことを知った上で。
ソレを見たらどんな反応をするのかも予測がついていながら。






少し遅れて未琴ちゃんの後を追うと、後ろ姿でもわかるくらいピシリと固まっていた。
表情だって手に取るようにわかる。
予想通り傷ついてしまった未琴ちゃんを優しく慰めるのがオレの役目。
アンタは精々目の前の尻軽女と仮初の愛でも育んでろよ。

オレは緩く口角を上げ、現実に絶望したオヒメサマの瞳を覆った。




「え、やだっなに?」

「わわっ。ちょっと落ち着いて未琴ちゃん」

「たか、お?」

「はーい。高尾ちゃんでっす」




突然のことに驚いて身をよじる未琴ちゃんを言葉で制して、出来るだけおどけて返事をした。
オレだとわかって肩の力は抜けても、疑問は残ったらしい。
震えを抑え込んだ小さな声が聞こえた。




「な、にして……」

「だって未琴ちゃん、アレ見続けんの辛くない?」

「っ!」




オレの言葉に息を飲むのがわかる。
目隠しを外して未琴ちゃんの身体を反転させれば、疑問と絶望を織り交ぜた瞳が揺れていた。




「あの、たか……」

「なかなかゴミ捨てから帰って来ないから心配したんだぜー?」

「ごめん……」

「っつっても、これじゃ仕方がないか」




申し訳なさそうに眉を下げて口を開いた未琴ちゃんを、わざとらしく言葉を被せて遮った。
安心させるように頭を撫でて、ある場所を一瞥する。
同時に苦笑いを零すと、更に困惑に染まる表情。
さしずめどうして気づいたんだってとこかな。
んなの気づいて当たり前っしょ。

未琴ちゃんがアイツを目で追っていたように、オレだって未琴ちゃんを見ていたんだ。




「気にするなって言いたいところだけど」

「え……」

「泣きたいなら、泣いていいぜ?」




誰も、見てねーから。
そう告げながら未琴ちゃんを優しく抱きしめる。
ぴくりと一瞬だけ身体をこわばらせ、すぐに声を押し殺して涙を流し始めた。

あんなヤツを想って零れるひたむきな雫に嫉妬して、唇を噛んで睨むことしか出来ない自分が情けない。
でもまあ、今未琴ちゃんがいるのはオレの腕の中だ。
これからゆっくりオレに振り向かせればいい。






(オヒメサマを手に入れるためなら)(オレはどんな手段でも使うぜ?)
(それが彼女を傷つけることになっても)

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