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□あめしずく
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「ねー宮地!今日はこれ観ようよ」




そう言って、満面の笑みでDVDのパッケージを見せる未琴にオレは口元がヒクつくのを感じた。

バスケ部の数少ない休みにはどちらかの家でDVDを観ながらのんびり過ごす。
別に取り決めたわけじゃねぇけど、オレと未琴の間で気付けばそれは当たり前になっていた。
今までは話題のアクションものやベタな恋愛もの、不朽の名作なんかを観ていたが、今回のはマズい。

うるりとした瞳でこっちを見つめる犬は確かに可愛いし、オレだって嫌いじゃない
けれども、マズいものはマズい。




「未琴、それはちょっと……」

「?……宮地、こういうの嫌い?」

「いや……嫌いじゃねぇ、けど」

「なら良かった」




DVDのパッケージさながらの無垢な瞳を向けられちまったら嫌とは言えなかった。
加えてふわりと笑う未琴に若干のあざとさを感じながらも、断るという選択肢はいとも簡単に消え去った。

そんなオレの浅はかな考えは、2時間後に泣きみることになる。




「ひっく、はちぃ……」

「っ……」




感動ものに弱い未琴は、案の定ハンカチを濡らすほど泣いている。
いつもなら肩を抱いて頭を撫でてやるとこだが、未琴を慰めることは今のオレには出来なかった。




―頼むからこっちは向かないでくれ。




そんな願いもむなしく、黙ったままのオレを不審に思った未琴がこちらを向く。




「あ、れ?宮地泣いて……」

「う……うっせぇ!見んな刺すぞ」

「わぶっ!」




未だに潤む瞳をオレに向け、不思議そうに首を傾げる未琴。
うわっ、その顔そそる……じゃねぇ!
泣き顔を見られたオレは恥ずかしさから勢いよく未琴の頭を自分の胸板に抱き寄せた。




「宮地ー。くるしいー」

「ちょっと黙ってろ」

「ふふっ。宮地くんもかわいーとこあんだねぇ」




―宮地のそういう優しいとこ、好きだよ。




くすりと笑う未琴を見ていたら、怒るのも馬鹿らしくなって顔を背けた。
目敏い未琴はきっと、顔を背けた本当の理由にも気付いて笑うんだろうな。







(あー!宮地顔真っ赤だよ)(ばっ……見んな!埋めんぞ!)(ピロリン)(おいっ)(かわいー!待ち受けに…………っ!)(調子乗りすぎだバカ)

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