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□紅く咲く
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「あれ?宮地サン、虫刺されっすか?……って、まだそんな時期じゃないか」
部室で着替えているときにふと目に入った宮地サンの鎖骨の少し下。
わずかに赤いそこに疑問を持ってそのまま口にしたら、宮地サンはきょとんとして大きな瞳を丸くした。
オレはというと、質問をしておきながら答えに行き着いてしまって、聞いたことを後悔した。
いやだって、それはきっと……。
「ん?ああ、未琴か」
デスヨネー。とはもちろん言えず、恥ずかしげもなく答えを口にした宮地サンを凝視してしまった。
この部屋に残っているのがオレたちだけでよかったと思う。
真ちゃんが聞いたら真っ赤になって「破廉恥なのだよ!」とか言いそうだし。
あーでも、ウブなエース様は気付かないかもな。
二人がそーゆーことをしてたのも意外だけど、未琴サンがソレを付けたのが意外すぎて言葉も出ない。
あれだ。好きな芸能人が何の前触れもなくデキ婚したときみたいな?
だっていかにも清純そうで大和撫子な未琴サンが自分から……。
あ、ヤバい。
想像したらヤバかった。
何がって色々と……てか、これから未琴サンの顔まともに見れねーかも。
「たーかーおーくん?」
「っ!は、い゛っ!?」
「てめぇ何想像してんだよ。沈められてーのか?ああ?」
「み、宮地さっ。これは、あの……」
完全に自分の世界に入っていたオレの頭を、額に青筋を浮かべた宮地サンが鷲掴みにしてきた。
ちょっ、マジ痛い!!
頭割れるって。
「そのままかち割ってやってもいいぞ?」
「えっ?!心ん中読まないで下さいだだだだだ」
「ん?」
「スミマセンでした」
「ん」
ギリギリと手に力を込めながら目元を暗くして笑う宮地サンは、視線を下げると盛大な溜め息を吐いた。
「ソレ、どうにかしてから帰れよ」
「え?……あ、はい」
「それと、」
―未琴使ったら轢く。
ドアに手をかけた宮地サンから振り向きざまに発せられた言葉。
オレは内心ムリだと思いながらも、千切れるほど首を縦に振った。
だって、宮地サンのあの表情はぜってーガチだ。
(清志くん。終わった?)(ああ。わりぃ、待たせたな)(ううん、平気。……あれ?高尾くんお腹痛いの?)(いやっ!大丈夫っす(その純真な瞳は反則っしょ))