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□やさしい双手
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「清志先輩お待たせしました!」

「おー、お疲れ。片付けるからちょっと待ってろ」

「はい!」




部活も引退して受験一本に絞られたオレは、図書室でバスケ部が終わるのを待つ。
マネージャーだからか、それぞれの自主練まで付き合う未琴は、いつも息を切らして図書室に駆け込んでくる。
乱れた未琴の髪を手櫛で直して、広げた教科書や参考書をしまって、二人で並んで帰るのはもう日課になった。




「今日は珍しいな。どうした?」

「私だってたまには甘えたくなるんです。……嫌、でしたか?」

「いや、むしろ大歓迎」




外に出て痛いくらいの寒さに耐えていたら、未琴が腕にくっついてきた。
普段なら手を繋ぐのもやっとな未琴の大胆な行動に、驚きつつもやっぱり嬉しい。
心配そうに眉を下げた未琴は、オレの言葉を聞いてはにかんで微笑んだ。




「そーいや未琴。オレに渡すもんねーの?」

「え?」

「オレちょっと期待してきたんだけど」

「あ、えと……あまり自信はないんですけど」




そう言って差し出された可愛らしい紙袋。
そして、オレはあることに気付いて未琴の手ごとそれを受け取った。
なるほど、そういうことか。




「きっ清志先輩?」

「手を繋がなかったのはコレが原因か」

「っ!」




指に貼られた絆創膏を撫でると、未琴はしまった。というように肩を揺らす。
まあ、未琴があまり器用じゃないのはオレも知ってたけどな。




「わた、し……料理とか下手で」

「ああ」

「指切っちゃったり、火傷したりして絆創膏だらけになっちゃって」

「ん」

「全然、女の子らしくなくて…………っ?!」




俯きながら話し始めた未琴は、言葉を重ねるごとに声が震えてくる。
表情はわかんねぇけど、その瞳から雫が零れる前にオレは未琴を抱き寄せた。




「オレのために頑張ってくれたんだな」

「はい」

「それで怪我しちまった、と」

「は、い」

「この手は、人のために頑張れる綺麗な女の手だと思うぜ?」

「きよし、せんぱっ」

「だからもっと自信持てよ」




潤んだ瞳に唇を寄せれば、くすぐったそうに身を捩る未琴が幸せそうに笑った。




(たとえ形が歪だろうが)(不味かろうが)(未琴の愛情が籠もっていれば)(それで十分だろ)

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