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□カトレア
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「えっ、黄瀬って……あの黄瀬くんの妹?!」




他にどの黄瀬がいるのか知らないけれど、そう言って雑誌の中で完璧な笑顔を浮かべる双子の兄と比べられることにはもう慣れた。
顔もスタイルも運動神経も、頭もまあ良い彼、黄瀬涼太は女の子なら誰もが憧れる王子様を体現した人。
加えてワンコのような人懐っこい性格で、彼の周りには男女問わず人が集まってくる。

そんな兄を持ったからといって、別に卑屈になるつもりはない。
両親は私たちを平等に愛してくれるし、片割れの涼太だって私を大切にしてくれている。
むしろ家族は大好き。

ただ、涼太をモデルとしか思っていないような、私をモデルの黄瀬涼太の妹としか見ていないような、表面だけで接してくる人たちの相手は疲れた。
そしてそんなことを言いながらも、心のどこかで涼太に勝手な劣等感を抱いている自分がこの上なく嫌い、大嫌い。




「その本、面白いですよね」

「えっ?」

「すみません。突然話しかけてしまって。でも、あまりに趣味が似ていたもので」

「はあ……」

「僕は黒子テツヤと言います。貴女は?」

「黄瀬、未琴です」




図書館で暇潰しのために適当に選んだ本を読んでいたら突然話しかけられた。
全体的に色素の薄い彼は、その容姿に合った綺麗な声をしている。

黄瀬、と名乗ったときに僅かに開いた目に、彼もか。と落胆した。




「未琴さん、ですね。よろしくお願いします」

「え……」

「黄瀬さんだと、黄瀬くんと紛らわしいと思って。迷惑、でしたか?」




気を遣ってくれる黒子くんに、私はふるふると首を振って否定することしか出来なかった。
初めてだったの、家族以外で黄瀬じゃない私を見てくれた人は。

それから、単純かもしれないけれど私の世界は色付いて、彼の影が薄いと言う人の言葉が理解出来ない程、私には黒子くんしか目に入らなくなった。
彼が好きだと言う読書を好んでするようになった。
涼太がいるからと、敬遠してきた体育館へも足を運ぶようになった。

彼が好きなものは私も好きになった。


彼が、黒子くんが触れたものなら、全てを愛せるような気がした。







(だから私を抱き締めて)(なんて思う私は強欲でしょうか)

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