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□彼ジャージ
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「へっくし」

「風邪か?」

「んーん。ちょっと寒いだけ……っ?!」




冬も本番になり冷え始めた体育館で、寒さのあまり思わずくしゃみが出た。
心配して声をかけてくれた大坪に返事をしていたら、いきなり視界がオレンジ色に染まる。
それが宮地のジャージだと気付いたのは、不機嫌そうにこちらを見る彼と目が合ったから。




「んな薄着してっからだ。それでも羽織っとけ」

「……ありがとう」




本当は休憩中に身体を冷やさないようにジャージは必須なはずだけれど、受け取らなかったら轢くぞコラ。って心の声が聞こえそうだったからありがたく使わせてもらった。
羽織ったそれは予想通りブカブカで、けれども宮地の匂いがしてすごく安心する。
普段は素っ気ない宮地の優しさが嬉しくて、身体以上に心があったかい。




「あ、休憩……」




時計を見れば休憩まであと5分。
私は作っておいたドリンクとタオルを取りに向かった。




「うっわー。未琴先輩の格好ちょーエロい」

「何見てんだよ高尾。緑間も顔赤くしてんじゃねぇよ、刺すぞ」

「しかし宮地。アレは……」




そんな会話がされていることなどつゆ知らず、用意を終えた私は異様な空気に首を傾げるしか出来ない。




「ちょっと大坪、休憩じゃないの?」

「あ、ああ。そうなんだが……」




歯切れの悪い大坪に疑問を抱くも、未琴。と私を呼ぶ声に振り返った。
もちろん声の主は宮地で、さっき以上に不機嫌さ丸出しの彼がいた。




「お前、今すぐそのジャージ脱げ。んで高尾にでも借りろ」

「何で?」

「オレのじゃデカすぎんだろ」

「うん。……でも、清志のジャージ落ち着く」

「はっ……?!」




無意識に彼を名前を呼べば、驚いた声を上げた。
見上げると片手で顔を覆う宮地の姿があって、隠し切れない両耳はこれでもかってくらいに赤くなっている。

視界の端では笑いを堪えたり、呆然とするチームメイトの姿が見えた。




「おまっ……ちょ、もう座って観てろ!」

「え、でもドリンク……」

「そんくらいオレが配るから」




両肩を押されていつものベンチに戻される。
座る瞬間、私にだけ聞こえる音量で宮地が呟いた。




「そういう格好はオレの前だけにしろ」

「え?」

「スカート、オレのジャージに隠れてめっちゃエロい」




―あと、いきなり名前呼ぶとか反則。襲うぞ?




最後の言葉だけわざとらしく耳元で囁く。
それがやけに色っぽくて、残り少ない練習に身が入らなかった。







(ぶふぉっ!も、無理。宮地サンのデレとか)(たーかーおー?お前そんなに轢かれてーの?)(げっ!未琴せんぱーい、宮地サンが……)(てめっ、やっぱ今すぐシバく!)

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