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□きみとぼくとのキョリ
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「え、転校?」




驚いて口に運んでいた卵焼きを落とす和成くんに、私は黙って頷いた。




「お父さんの仕事の関係で。3年間だけらしいんだけどね……」

「マジか、高校卒業しちゃうじゃん。場所は?」

「秋田」

「うっわ、遠いなー」




そう言いながらもケタケタ笑う和成くんが理解出来ない。
和成くんは淋しくないのかな、私と離れるの。
始めてこの話を両親から聞いたとき、仕方ないとはわかっていても私はショックでしばらく立ち直れなかった。
だって、大好きな和成くんと一緒にいられなくなるんだもの、悲しくないわけがない。




「3年かぁ。未琴ぜってー今より美人になってんだろうなー」

「……」


「秋田ってことは毎日美味いご飯が食えるのか。いいなー」

「和成くんは、」

「ん?」

「和成くんはどうしてそんなに普通なの?」




何でもないように、まるでちょっと旅行にでも行くような口振りの和成くんに私は我慢が出来なかった。
疑問と不満が混ざって思わず余計なことを口走ってしまった。

きょとんとしながら私を見た和成くんは、数拍おいてまた笑い出す。




「和成くん」

「あー、ごめんごめん。未琴が可愛くて、つい」

「え?」




私は目尻に溜まった涙を拭いながらもなお、肩を揺らす和成くんに首を傾げた。
いつも思うけど、和成くんの笑いのツボはよくわからない。




「いやー、オレだって未琴と離れるのは嫌だぜ?……でもさ、」

「うん」

「距離が離れただけで揺らいじまうほど、オレらの関係って浅かったっけ?」

「……」

「そりゃ毎日会って、こうして一緒に弁当食うにこしたことはないけどさ。遠くなるからって、気持ちまで離れていくような付き合いをしてきたつもりはねーんだけどな」

「かず、なりくん」

「たった3年っしょ?そんくらいよゆーだって!」




私を見て、今度はにっこり笑う和成くんにドキリとした。
同時に不安を感じていた自分が恥ずかしくなる。
おひさまみたいな笑顔をくれる彼は、こんなにも私を想ってくれているというのに。
近すぎて気付けなかったなんて。




「あ、でも……」

「どうしたの?」

「浮気したらさすがに泣くかんね!」

「そっそんなことしないよ!私は和成くんが大好きだから!……あ、」




勢いあまって、とんでもなく恥ずかしいことを言ってしまった。
あ、穴があったら入りたい……。
だけど私を優しく見つめて、嬉しそうに頭を撫でてくれる和成くんに、たまには伝えてみるのも悪くないと思った。







(未琴の好きが聞けてうれしーわ。もう一回言って)(言わないよ。恥ずかしいもん)(んじゃ、態度で示してくれてもいいぜ?)(え、ちょっ……和成くん近いっ!変態!)((そんな全力で拒否んなくてもよくね?!))

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