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□翔くんと期末テスト(+オマケ)
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「あー。うーん……はあ」
「翔、うるさいですよ。黙りなさい」
「あ、トキヤ。お前は来月の期末試験大丈夫なのかよ」
「愚問ですね。私は予習復習は欠かしませんから」
「げ……」
期末試験まで2週間と迫ったある日の放課後、私の席の後ろからそんな会話が聞こえてきた。
どうやらパートナーの翔くんはお困りのようで、私の手は無意識に机の中に伸びる。
そこには少しでもお役に立てたらと、要点をまとめたノートが入っている。
良かったら使って。そう言うだけでいいのに、なんて意気地がないの、私!
「じゃあトキヤ、俺に勉強教えてくれよ」
「嫌ですよ。翔のために割く時間が惜しい」
「んだよ、冷てぇな」
あ、トキヤくんが教室を出て行きました。
今がチャンス!
い、今が……チャン、ス…………あああやっぱり無理!
断られたら、と考えただけで泣きそう。
「一人で百面相してどうしたんだい、レディ?」
「れ、レンくん。これは……その」
「そのノート、おチビちゃんに渡したら喜ぶと思うけどな」
「え?レンくん何で知って……」
「レディのことなら何だってお見通しさ。……ねえ、レディ?おチビちゃんにそれを渡さないのなら、オレにくれないかな?」
「だっ駄目です!これは翔くんのために…………あっ」
必死になった声が、まばらになった教室に響いてしまった。
当然それは名前の上がった彼にも聞こえてしまうわけで……。
きょとんとしながら近付いてくる翔くんを見て、私は数秒前の自分を恨んだ。
「お前ら何の話してんだ?」
「しょ、うくん」
「レディがおチビちゃんに渡したいものがあるらしくてね」
「!」
「じゃあ、オレはこれからデートだから」
何てことを言い逃げしていくの、レンくん!
と、無言で訴えたら、彼はウインクを一つして口パクで「頑張ってね」と応援してくれた。
ああ、レンくんは本当に周りを見ているんだと感心する。
この状況はやめて欲しかったけれどもね。
「なあ、渡したいものって?」
「え……あの、これ」
「ノート?」
「授業の要点とか、覚えなきゃいけないことをまとめてみたの。よ、良かったら……」
「これ、お前がまとめたのか?」
「うん……」
「スゲー!超綺麗じゃん。ありがとな!」
ああ、翔くんの満面の笑みが眩しい。
それが見れただけで私はもう満足です。
「あ、あのさ。お前さえ良ければ一緒に勉強しねぇ?」
「一緒に、お勉強?」
「その……一緒にやった方がはかどるし、俺がお前といたいっつーか」
「うん。私も翔くんとお勉強したい」
「マジで?よっしゃー!!」
(つっても、どこでやるか)(あ、じゃあ私の部屋はどうかな?)(は?!)(大丈夫、同室の子辞めちゃったから)((いや全然大丈夫じゃねーし))